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「そんな事は有り得ない」

 私はそう言いながらも、背筋が凍るのを感じた。冷や汗が止まらない。一つの可能性が脳裏をよぎったからだ。それは、その結界で封じる事が出来ない存在がある事を思い出したからだ。だが……そんな筈は無い!

「ルナさん、どうしたの?」

「パパ!」

「ルナ!」

「皇帝!」

 同時に皆が私に呼びかける。そうだ……私がしっかりしないでどうする?私がこの世界を守らなければ、一体誰が守る?

「『転送』により、フィグリル城に眠る私の剣を」

 私がそう言うと、目の前にかつて私が使っていたオリハルコンの剣が現れた。これが、私が現在使える最強の武器だ。父である神との戦いでは『神剣』という究極の剣があったが、それは戦いの終わりと共に消えてしまったからだ。『神剣』は私を想う者の魂が剣と化した物……神との戦いが終わり、その魂は生まれ変わる為にこの世界から消えていったのだ。

「ルナさんっ!?そんな剣を出して何をするつもりなの!?」

 シェルフィアが血相を変えて私の腕を掴む!10年前から私は剣を握る事は無かったからだ。

「念の為だよ。心配いらないさ。ちょっと見て帰ってくるから!」

 私はそう言って、眼前に浮く剣を握り絞めた!

「……一人では行かない約束でしょ!?」

「そうよ、パパ!」

 二人は、私の両腕を離さない。これでは、転送で聖域に向かう事もできない。

「そうだな。確かに約束した。何があっても離れないって」

 私はそう言って剣を下ろす。そして、セルファスやディクト達に言った。

「今から、私達は聖域ロードガーデンに向かう。もし、そこに原因があればそれを排除するつもりだ。その際に……私が剣を振るう事になるかもしれないが、心配するな。必ず戻るから!皆は待っていてくれ!」

 すると、心配そうに皆が私の傍に近寄る。

「必ず全員無事で帰って(こいよ!)(きてね!)(きて下さい!)」

 私は強く頷き、まずはエファロード第4段階まで力を解放した!銀の髪、真紅の目、光の翼……そして神としての記憶の覚醒だ。こんな力を使うのは10年間一度も無かった。そして、転送の為に精神を集中する!慣れたもので、シェルフィアとリルフィはすぐに私の体に抱き付く。

「聖域ロードガーデン上空へ!」

 

〜時を変える来訪者〜

 景色が目まぐるしく変わり……やがて、聖域の上空へと変わった。

「あれは!?」

 聖域の中心に見た事も無い植物が生えている!私達は結界の中に入り、その植物に近付いた。すると……

「これが原因ね」

「パパ……わたし、とても眠くなってきた」

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