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「成程……世界が眠っているのは、神術や魔術の類ではないと……しかし、今までにそんな話は聞いた事がありませんね」

 白髪の頭に手を遣りながら、ディクトは真剣な面持ちで考え込む。同様に学者達も首を傾げていた。

「物理的なものが作用する眠りであるとすれば、必ず働きかけている物が存在する筈です!それを探せば!」

 一人の学者が思い付いた瞬間にそう叫んだ!

「そうですね。それを探す事で原因がわかるでしょう!しかし……場所が?」

 ディクトがそう言った直後、リルフィが言った。

「皆さんの話を整理すると、必ず原因の物が存在するという事ですよね?その原因の物が周りに作用させているとするならば、各地で眠りが発生した時間の差から原因の地点を算出できるんじゃないですか?」

 恐ろしい娘だ……たった8歳にして、研究に生涯を捧げる学者達と張り合うとは!しかも、この考えは……

「素晴らしい。流石は皇帝の御子息です!早速計算を始めましょう!」

 大きなテーブルに大きな世界地図を広げ、各地で眠りが発生した時刻を書き込んだ。フィグリル城での正確な時間はわからないがある程度は絞られる。リルフィが学校で現象が発生した時間を覚えているからだ。そして、各地の時間と共に計算すれば大体の地点が求められるだろう。時間が書き込まれた瞬間、私の頭の中で数式が描かれ答はすぐに出た。

「まさか……そんな筈は!?」

 私は、各地を結ぶ線を引き計算結果の地点を指し示した。全員が計算結果の正しい事を確認した上で示した地点を見て叫ぶ!

「『聖域ロードガーデン』!」

 聖域ロードガーデン……ここは、かつての人間界には無かった場所だ。それもその筈……この場所には、太古より人間界と獄界を繋ぐ『死者の口』があり、10年前に天界が死者の口に覆い被さるようにこの場所に融合したからだ。天界がこの場所に融合したのには訳がある。それは、私の最愛なる兄であるハルメスが、命と引き換えに死者の口……即ち獄界への道を塞いだ事に起因する。天界をこの場所に融合させる事によって、死者の口の復活を阻止する事が出来るからだ。天界の融合後この場所から、天使だった者は出発した。そしてこの場所は聖域ロードガーデンと名付けられ、天界の遺跡が残る事となる。今では、本や貴重な物質は全て持ち運ばれて私が強力な結界を張っている。この場所に張っている結界は、死者の口を封じていても万が一起こり得るかもしれない獄界からの侵入(転送等を用いた空間転移術での侵入)を防ぐ為のもので、エファロードである私やシェルフィアぐらいの力が無ければ結界に触れた瞬間対象者が消滅する程のものだ。だからこそ、その場に誰かがいるという事は有り得ない。勿論、眠りを起こさせるような天界の遺物がそこにあるとは考えられない。人間界でその場所に行けるのは、私とシェルフィア、そしてエファロードとしての力を内に秘めるリルフィだけだ。

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