前ページ

 その後も授業は滞りなく進んでいった。リルフィは全ての教科で最優秀の成績で、ウィッシュは全てで二番だった。かつて、私が天界にいた時は自分の能力が他者と違う事が嫌だった。特別視されるのも辛かった。

 しかし、今の人間界は誰かを隔てるような考えを持つものはいない。人にはそれぞれ役目があって得意分野がある。皆が協力しあって世界は構成されていると思っているからだ。『不必要な者』など誰もいないのだ。だから、リルフィの能力も誰かに妬まれるような事はない。リルフィの力も、この世界に必要な大切なものの一つでしかないからだ。ただ、ウィッシュはリルフィには負けたくないらしく日々頑張っているようだが。幼馴染で、自分は男の子だからと思っているみたいだと聞いた事がある。

 

 授業参観が終わり、今夜はフィグリル城で久々の会食を行う事になっている。セルファス達は勿論、現在リウォルを治めているノレッジも来る予定だ。リウォルは、かつて禁断の兵器が使用され私が沈めたリウォルタワーの跡地からオリハルコン等の珍しい物質を採取する。その為、学者が多く集まり世界の技術進歩の最先端を行く街となった。

 また、あの街は思い出深い……街には、フィーネが私の腕に抱きつく像があるし、私とフィーネが初めて愛を確認し……後に婚約を果たした湖も近くにある。人間界には思い出が多いとつくづく思う。

 ノレッジの他には、人間も数名参加する。人間の中で特筆すべきは、『知識の街リナン』を治めるディクト・リナンだ。彼は生粋の人間でありながら深い知識を持ち、私に対しても意見を出してくる貴重な人物だ。『知識の街リナン』は、10年前に天界と人間界が融合した際に『天界と人間界の書物』を全て一箇所に集約する目的で作られた。そうする事で『知識』の研究をより深く効率よく行う事が可能となった。実際に、この街が現在の技術躍進に果たした役割は大きい。

 

 そして、陽も落ちて会食の時間になった。

「皆様、本日もお忙しい中ようこそお集まり下さいました!人間界の今後の繁栄を願って……乾杯!」

「乾杯!」

 セルファスが乾杯の音頭を取り、場にいる皆が杯を交わした。このような会食は不定期に行われる。大体が、私達家族とセルファス達、そしてノレッジの都合が良い時だ。今日はリルフィとウィッシュの授業参観なので、夜は会食という事が前々から決まっていた。

次ページ