前ページ

『学校』は各街に一つずつあるが、月に一度『フィグリル中央学校』で任意参加制の世界規模の交流会(授業)がある。これは子供達の視線を世界に向けさせる事が狙いだが、友達も多く出来るので子供にも受けがいい。そして、授業は誰が参観してもいい事になっているのだ。

「ああ、シェルフィアも呼んで来る!」

 私はそう言って厨房まで駆け出した。そして、シェルフィアと合流して少し急いで昼食を食べて城を出発した。学校までは、機関車を使って10分程の距離だ。勿論私は空を飛ぶ方が早いが、セルファス達の翼は消えつつある。私が天界の維持を放棄し、人間界と融合した時点から天使達は時間と共に力を失ってきているからだ。まるで、それを補うかのように人間界では科学技術が発達した。何にせよ、平和ならば力を使う必要も無い。私達は談笑しながら『フィグリル中央学校』へと向かう機関車に揺られていた。機関車には、世界各地から授業参観に出席すると思しき人が多い。

 しばらくして私達は、世界で随一の講堂規模を持つフィグリル中央学校に到着した。

 

「皆さん!この問題を解く為に必要な事は何でしょうか!?わかった人は手を挙げて下さい!」

 沢山の生徒達が座る広い講堂に隅々まで響き渡る声を出しているのは、20代前半の人間女性の新米教師だ。現在、各地にある学校で勉強を教えているのはほとんどが人間だ。人間は、元天使達の知識を吸収して以前よりも博学な者が増えた。無論元天使達は、何もしていないわけではなくちゃんと学問、技術の向上に貢献している。

 世界は、皇帝として私が治め……元天使と人間達によって更なる発展を目指しているのが現状だ。それよりも……

「はいっ!」

 リルフィが誰よりも早く、元気良く手を挙げたので私とシェルフィアは驚いた!

「はい!」

 そのすぐ後に、セルファス達の息子ウィッシュが挙手した。

「じゃあ、リルフィちゃんとウィッシュ君黒板に書いて下さい!」

 教師がそう言うと、二人は小走りに前の黒板へと向かった。

「(リルフィ、頑張れ!)」

 私とシェルフィアは小声で囁き、息を呑む。隣では、セルファス達も同じ様子だった。

 この問題は数学だが、発想力を問われるものだ。しかも、7歳や8歳で解けるレベルでもない。リルフィの代わりに私が解きたい衝動に駆られたが、ここは娘の力を信じてあげないとな……

「はいっ、リルフィちゃん正解!先生が言う事は何も無いわ。ウィッシュ君、惜しいわね。あと一歩よ!」

 その瞬間、リルフィは私達の方を嬉しそうに見た。同時に、ホッとしたがウィッシュとセルファス達はガックリ来たようだった。

次ページ