「うぉぉ……ルナ!お前って奴は!」
セルファスは号泣していた。人情に溢れた奴だな。そんな所を私は少し尊敬している。
私達は先を急いだ。この先で……ジュディアに出会う事になる。それが不安だったが、前に進むしか道はない!
私は翼を広げ、塔の中を飛び回る。そして、15時間程で1000階まで辿りついた。途中、天使の姿は無く同じ構造のフロアが繰り返されるだけだった。大理石の壁と床と柱……そして螺旋階段。壁には神術で灯された燭台……それが繰り返されたのだ。無論、昼も夜もわからない。フィグリルを出てから既に二十数時間が経過している。シェルフィアとリバレスの顔に少し疲れが見えたので、ここでしばらく仮眠する事にした。食事を摂り、3時間程眠る。
丁度3時間……そこで、最初に目覚めたのは私ではなくシェルフィアだった。
「ルナさんっ、リバレスさん時間ですよ。起きてください!」
シェルフィアが優しく私の体を揺さぶる。
「早いな、シェルフィア」
「う、うーん……そういえば、シェルフィア昔も早起きだったもんねー」
私達は眠い眼を擦って立ち上がった。
「ふふ……ルナさんのご飯を作らなければいけないのに、ルナさんより遅くに起きちゃダメですからね」
緊迫した空気を打ち消す、シェルフィアの笑顔と声はまるで天使のようだった。
「頼りにしてるよ。行こうか!」
私はシェルフィアの頭を撫でて、すぐに出発した。飛行を再開して6時間程が経つ……ここは1500階だ。
「来ましたね。愚かな脱落者が!」
細身の……何より眼鏡が似合う秀才……ノレッジが私達の前に立ちはだかる。
「お前まで私の道を閉ざそうとするのか?」
私は失意の目を向ける。すると、彼は見下したような笑みを見せた。
「君のようなクズを通す理由が僕には見当たらない。神の名を受け継ぐ者でありながら、天界を背く愚かさに言葉もありませんよ」
ノレッジは首を振る。この男は……友じゃない。私にはそれが理解できた。
「そうか……お前はさぞ嬉しい事だろう。私が天界から消えて、念願のトップになる事が出来たのだからな」
私は、ノレッジは臆病者だが友だと思っていた。その裏切りに対する思いが、私の口からそんな言葉を走らせる。
「いいえ!元々、僕の方が優れた頭脳の持ち主だったんです!君がいなくとも、僕はいずれ天界一になっていた。それを見せられなかったのが残念ですよ。それに、これから先もそれを見せる事は出来ない。何故なら、君はここで力尽きるのだから!」