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 倒れた私にセルファスが近寄る!しかし……雷光を纏うセルファスも無事な筈がない。全身が火傷のように変化しつつある!

「セルファス……お前の決意はよくわかった。お前が命を懸けている以上、私も全力を出す!」

 私は翼を開き、瞬時にセルファスとの距離をあける!

「禁断神術……『滅』!」

 空間が萎縮する。そして消滅する!私は強大な『無』のエネルギーを放った!

「これが……ジュディアを傷付けた術か!?確かにこれじゃあ、どうしようもねぇな!」

 ジュディア?そういえば、奴はジュディアを愛していた。

「うぉぉ!」

 何を考えているのかわからない。何とセルファスは『滅』を避けずに、真っ向から立ち向かったのだ!

「やめろ!死ぬぞ!」

 私は叫ぶ!私はセルファスを殺すつもりなど毛頭ない!

「敵に情けかよ!?相変わらずお前は甘いぜ!だが俺はこんな術で死なない!」

『滅』と対峙するセルファス……その表情には確固たる自信が溢れている!

「わかったからやめるんだ!」

 私の声はもはや奴には届いていない!

「ぐっ……うがぁぁ!」

『滅』がセルファスを飲み込もうとした瞬間!

「パァァ……ン」

 奇跡が起きた!小規模とはいえ、『無に帰す力』を一人の天使が消し去ったのだ!

「やったぜ……俺の……勝ちだ」

 何に勝ったのかはわからないが、力を使い果たしたセルファスはその場に倒れこむ。敵の筈なのに、私は奴に歩み寄った。

「セルファス……お前は」

 私は倒れているセルファスを抱き起こす。

「……ジュディアが、お前の恋人を殺した時……俺がその場にいたらな……って思ったんだ。あいつはお前にとって許せない事をしたが、俺はジュディアが大切だ。お前が、ジュディアを消そうとした時……俺なら守ってやれるか試したかったんだ。あいつは、本当にひどい事をしたな。許せないだろうが、俺が謝る。すまない」

 セルファスは息も絶え絶えにそう言った。その真意は、奴の左薬指を見て理解した。

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