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「ルナさんっ!帰ったら……結婚式挙げましょうね!」

 塔へ向かう途中、シェルフィアは指輪をギュッと握り締めてそう言った。

「ああ、皆に祝ってもらおうな!」

 私がそう言うと、シェルフィアは嬉しそうに微笑んだ。

「はいはーい、ちゃんと祝ってあげるから頑張りましょうねー!」

 リバレスの『やれやれ』というような表情が目に浮かぶ。どんな苦難でも、4人なら乗り越えられそうな気がした。

 私は更にスピードを上げて、目的地へと急いだ。

 

〜越えるべき障壁〜

 天高くそびえる塔……そこに到達したのは、丁度昼頃だった。頂上は見えない。恐らく、獄界への道と同じ程度の高さ。

「扉が閉まってるわねー」

 リバレスが巨大な扉に触れるがビクともしない。扉だけで高さと幅が5mはある。勿論、オリハルコン製だ。

「仕方ない、手荒だが破壊するか」

 私が剣を構え、力を集中する。その時!

「ギィ」

 何もしていないのに扉が開いたのだ。

「開きましたね。行きましょう!」

 開いた扉に最初に入っていくのはシェルフィア。

「おい、待てよ!全く……変わってないな」

 無謀な所は変わっていない。私はすぐに追いかけた。

「本当に。急ぎましょー!」

 私達が塔に入った瞬間……私は扉が開いた理由を理解すると共に言葉を失った。

「久し振りだな」

 塔の1階に立っていた者……それは……

「セルファス!」

 大柄で筋肉質……天使特有の曇りの無い金の髪……そして、強い決意を秘めた目でかつての友は私を見据えていた。

「お前は変わってしまったな……お前は俺が誰より尊敬する存在でライバルだったのに……そして、お前はエファロードであるというのに天界の為すべき責務を阻害しようとしている。俺は、力司官であり、かつての友としてお前の愚行を見逃すわけにはいかない!」

 セルファスは一瞬悲しい顔を見せたが、すぐに私を睨みつけ剣を抜いた。天界で鍛え上げられた聖剣だ……司官のみが持つ事を許される。

「私は、自分の信じる道を進む。お前も知っているだろう?人間が生まれた意味を!?真の心を持たない天界の計画……私は断じて許さない!だから……それを阻むのならば、私はお前と戦う。例え……友としての心を失っていなかったとしても!」

 私はそう叫び、剣を抜いた。気迫が、大理石のフロアに充満する!

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