【第八節 未来の為に】
「さぁ、出発だ!」
運命の朝、日が昇った瞬間兄さんがそう叫んだ。
「行きましょう!」
私とシェルフィアとリバレスはそれに呼応する。ここは、フィグリル城屋上……ここから私達は飛び立つ。
「ルナ、頼むぜ!お前は……最高の弟だ!」
兄さんと私は同時に光の翼を開いた。飛び立つ直前、兄さんはそう言って笑みを見せた。
「はいっ!ハルメス兄さん、あなたは、私に全てを教えてくれました!あなたは師であり、最高の兄です!」
私達は拳をぶつけあった。もうこれ以上の言葉はいらないだろう。
「シェルフィア!しっかりつかまってろよ!」
私はシェルフィアを抱きかかえて飛び立った。リバレスは、指輪に変化している。
「はいっ!皇帝、行ってきます!それから……どうか、ご自愛を!」
私達はもう城の上空にいる。兄さんとは、ここでしばらくのお別れだ。シェルフィアは、背を向ける兄さんにそんな言葉をかけた。
「ああ、俺の心配はいらないぜ!お前達……何があっても……前へ進むんだぞ!」
何故か兄さんはこちらも向かずにそう叫び、飛び去っていく!
「兄さん!約束通り、新しい世界でまた会いましょう!」
私は目一杯の声で叫んだ。すると、兄さんは拳を作って空に突き出した。力強い意思表示だった!
「ルナー!私達も行きましょー!」
リバレスの声の直後に、私は『贖罪の塔』へ向けて出発した。一度も行った事のない場所には、『転送』で移動することは出来ない。塔への距離は、ここから北北西に500km程度。体を光膜で包みながら全速力で飛べば、5時間もかからないだろう。