私は、そう言ってシェルフィアを抱きかかえた。そして、翼を開く……景色は瞬く間に小さくなっていった。
「空を飛んでるみたいですね」
シェルフィアは約束を守り、目を閉じたままだ。
「ああ、でももうすぐ着くからもうしばらく待ってくれよ」
こうして向かった先……そこは……
「目を開けてもいいよ」
私がそう告げると、彼女はパッと目を開いた。
「ここは……あの時の湖!」
そうだ……ここは、私達の心が初めて通じ合った場所。200年の時を経ても何ら変わっていない。しかも、あの時と同じ下弦の月が輝く。それが遠くの山々の雄大な影を作っているのだ。空には一面の星々……一点の曇りすらない。優しい風が、時折水面を揺らす……それでも、静かな湖面は柔らかな光を映し出していた。
ここにあるのは、私達二人と……それを包む優しい自然だけだった。
「覚えてるみたいだね。ここに来たのには理由があるんだよ」
驚いているシェルフィアに私は微笑んだ。
「理由ですか?教えて欲しいです」
清澄な空気の中で彼女の澄んだ声が響く。
「隠していたのは悪いと思ったんだけど、どうしてもびっくりさせたくて」
私は、上着の内ポケットから小箱を取り出した。
「え……何ですか?」
彼女は首を傾げる。真剣な私の様子に、彼女も緊張しているようだ。
「開けてみてほしい」
私も少し緊張してきた。思わず声が小声になる。
「……これは!?」
彼女は驚いた。それもそのはずだ……中にあったのは、眩い虹色の光を放つ宝石を纏った指輪だったからだ。
「……シェファで作った指輪だよ」
私は、そっとその指輪を手に取った。
「……私は、永遠に君を愛し続ける。約束するよ……君を必ず幸せにするって。だから……この先に待つ戦いが終わったら」
「……結婚しよう!この指輪はその約束の証なんだ」
私は胸が震えながらも、じっとシェルフィアの目を見つめてそう言った。
「……はいっ!喜んで!」
シェルフィアは嬉しさに涙を流していた。私は、そんな彼女が愛しくてギュッと抱き締めた。
その後に、シェルフィアの左手薬指に指輪をつけた……そう、幸せな未来の証となる婚約指輪を……
「……愛してるよ」
「……愛してます!」