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「丘へ向かおう……変わっていない場所が必ずあるはずだ!」

 私は、この場を離れる為にシェルフィアの手を取った。その手は震えていた。寒いわけじゃない。不安なんだ。

 丘へ向かう道……村の中心を離れて私達は急いだ。鉱山から離れていくので、民家や工場は減ってきたがまだ昔の影は無い。

「フィーネの家もありませんね」

 シェルフィアは、かつての自分の家の場所を見つけた時そう呟いて落胆していた。やはり、故郷の姿は変わってもわかるものなんだ。

「大丈夫だ……この先必ず!」

 私はまるで自分に言い聞かせるようにシェルフィアに言った。200年という年月の長さを噛み締めながら……

「あれは!?」

 二人とも黙って歩いていくと、初めて見覚えのあるものを見つけた!

「シェルフィア!」

 私は走っていく彼女を追いかけた。そして、立ち止まった先には……

「フィーネのお父さんとお母さんの」

 墓だった。辛い世界で、フィーネを愛し育んできたご両親の……私は、ここでフィーネの強さを感じたんだ。

「……はい、ここに来ると、鮮明に思い出します。グスッ……フィーネは、こんな辛い思いをしたのに旅に出ようと決心したんですね。まるで、胸が焼かれそうです。私は、フィーネ程強くない。でも、私の心にはフィーネがいる。おかしいですよね?」

 シェルフィアは……フィーネの心と葛藤している。私にはそれが痛い程わかった。彼女をフィーネだと感じる時と、シェルフィアだと感じる瞬間……それが繰り返される。彼女の心は不安定なままなんだ。私は、この先に不安を感じた……約束の場所でシェルフィアの心が壊れてしまったら!?私は、いつの間にか俯いて青褪めた顔をしていたのだろう。

「ルナさん!行きましょう!私は大丈夫です!」

 シェルフィアは叫んだ。シェルフィアも同様に強い心の持ち主だ……私はそう感じた。立ち止まっては行けないんだ!

「……丘はもうすぐだ!約束の時が訪れる。何も心配はいらないよな!」

 私は前をじっと見据えた。シェルフィアもそれに続く……そして!

 

「ミルドの丘」

 

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