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「……思い出して下さい……私が『心』を失いかけたとしたら何処へ行くのか?」

 シェルフィアは囁いた。優しい無垢な瞳で……私はその中にフィーネと同じ強さを見つけた!

「そうだ!すまない。君の心を一つに出来る場所があるんだ。……行こう!」

 私は涙を拭って立ち上がった。200年前の約束を……今こそ果たす時が来た!

 200年前に約束を交わし……魂の再会場所と決めた丘……

 私達が初めて出会い……200年前には帰れなかった丘……

 

「雪の降るミルドの丘へ!」

 

 私とシェルフィアは同時に叫んだ!今からそこへ向かう。転送の神術で!私は兄さんとリバレスを置いて、シェルフィアと共に城のテラスに立った。S.U.Nが地平線に沈もうとしている。その夕陽を浴びた城下町……石と金属で造られた世界は何故かとても力強く見えた。ミルドは……今はどうなっているんだろう?変わっているんだろうか。丘は無事だろうか?

「ルナさん、連れて行ってください。私は、何が現れても受け入れます!」

 シェルフィアは力強く微笑んだ。心のままに受け入れる決心が出来たのだろう。

「ああ。必ず君の心は戻る。いや、一つになるから!私を信じていてくれ」

 私はそう言うと、シェルフィアを抱きかかえた。そして意識を集中する!

 

『転送!』

 

 私達の体はフィグリルから消え去った!瞬時に景色が塗り替えられていく!私達は目を閉じて……固く手を結んでいた。

 

〜信じる心〜

「こ……ここは!?」

 私達が転送してきた場所……そこは、全く見覚えの無い場所だった。

「変わってしまった。何もかも……あの時の面影はどこにも!」

 そう……目を疑う程の変化……ミルドには見えない!レンガ造りの家々……舗装されていない土が剥き出しの道……そして、溢れんばかりの自然や美しい小川のせせらぎが聞こえていた村の姿はどこにも無い。今見えるのは、薄汚れた石畳の道と煙を噴き出す家々……そして、黒煙を出す工場……恐らく、200年前に鉱山として生計を立てていたこの村は成長して金属加工を主として行っているのだろう。その証拠に、家の屋根……扉、窓、外壁にいたるまで薄い金属で覆われている。それが、ススで汚れているのだ。目を開けると痛い程の有害な空気……金属を熱する火の熱気……この村はそれに支配されていた。

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