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「まず……文明の高度化だ。もしかすると、近い未来には天界に匹敵するかもしれないほどだ。そしてその文明で人間は武器を作り、ある程度の魔となら対等に渡り合える程の武力を得た。そんな中で、力と強い支配欲を持った人間が現れたんだ。それが、『リウォル王国』の国王だ。国王は、俺が治めるこの『フィグリル皇国』に対して宣戦布告をし、世界は二つに分かれて戦争中なんだ!」

 兄さんは悔しそうにテーブルを叩く。すると、大理石のテーブルに亀裂が入った。

「何故そんな事に!?兄さんの力なら、そんな人間など押さえつける事など容易なことでしょう?それに、人間どうしで争っている余裕などあるのですか?戦うべき相手は魔でしょう!?」

 私もドンッとテーブルを叩いた。テーブルの亀裂が増える。

「……そうだ。俺が力を使えば、一つの王国を滅ぼすのは容易い。しかし、それは何の解決にもならないんだ。次は別の人間が同じような考えを持ち、戦争を起こそうとするだろう。だからこそ、全ての人間が納得いく形で平和的解決をするしかないんだ」

 兄さんはガックリと頭を垂れた。兄さんの言う事はもっともだ。それに、私達は人間を愛している。滅ぼす事なんて出来はしない。

「悪い事を考える人間もいるもんねー」

 リバレスもガッカリしたように首を振った。彼女の人間観も変わったものだ。昔は、あんなに人間を見下していたのに。

「それだけならまだ良かった。争いは、ルナとリバレス君と一緒なら必ず解決出来る。問題は、もう一つの事だ」

 そう言った瞬間……兄さんの目が恐怖に満ちた。よほどの事だろう。私は覚悟した。

「……『計画』ですか?」

 私は心臓が高鳴るのを感じながらそう言った。

「……その通りだ。『計画』……現在の『神』が打ち出した獄界との和平策……それがどんなものだかわかるか?」

 兄さんは声のトーンを下げてゆっくりと訊いてきた。

「……想像していた事とは違う事を願います」

 私は祈るように目を閉じた。最悪の想像が頭に浮かぶ……

「お前の思う最悪の事か……それ以上の事だ。お前が眠ってから、魔の侵略は小規模なものだった。皮肉にもそれが人間の戦争を起こす原因にもなったのだがな。それよりも、魔の侵略が今まで小規模だった理由……それは、『計画』の為に力を温存していたからだ。魔だけじゃない、『計画』には全ての『天使』達も加担する。100年前に、俺に無駄な取引を迫った司官ノレッジより知らされた内容……たった3ヶ月後……『天使』と『魔』……そして、『神』によって行われる計画……その名は」

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