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 私は、それを疑問に感じたので聞き返してみる。

「はははっ!やっぱりお前らしいな。人間の女性も色々いるさ!まぁ、稀に似ることもあるけどな。シェルフィアは、今世界で起こっている戦で両親を失った所を俺がこの城に連れてきたんだ」

 兄さんは笑い出す。その真意は読めない。何故そこまでシェルフィアに固執するのだろう?

「ハルメスさん、ルナはずっと鈍いんですよー」

 リバレスまで笑い出す。一体どういう事だ?

「その話はまた後にして……お前に話す事がある」

 そう言うと、さっきまでの柔らかい顔とは変わって兄さんの顔は真剣そのものになった。私もすぐに身構える。

「はい、どんな話でも聞きましょう」

 そうして、私達3人は兄さんの個室に向かった。個室は豪勢で、金銀宝石で装飾された兄さん専用の椅子。シルクのベッド。天井にはシャンデリア。そして、誰だかわからないが女性の彫像があった。その彫像は美しく、とても優しい目をしていた。それは恐らくティファニィさんを象ったものだろう。そう考えていると、沢山の美味しそうな料理が山程運ばれてきた。話の準備は整ったのだ。

「何から話そうか……まず、俺が皇帝になったのは知っているな?」

 兄さんは椅子に腰掛け、大理石のテーブルに手を重ねて私の目を見てそう質問してきた。

「はい。少し驚きましたけど、何故皇帝なんかに?」

 兄さんが皇帝になったのは、私にとって不思議な事だった。兄さんは権力など欲しないはずなのに。

「ふっ、それは俺が進んでやのった事じゃない。群集に半強制的に任命されてな」

 そこで兄さんは溜息を漏らした。これだけの規模の街……いや、国を治めるんだ。大変な事だろう。

「確かに兄さんならば、頼りにされて当然ですよ」

 私は微笑んだ。私が誰より頼りにしている兄なんだ。人間が頼ってきても不思議はない。

「堅苦しいのは好きじゃないんだがなぁ……まぁ、それを知っているなら話は早い。俺が説明したいのはこの200年と、これから起きる事についてだ」

 兄さんは照れていたが、すぐに真剣な面持ちに変わった。

「一体何があったんですかー?」

 私の肩に座るリバレスが即座に聞き返す。

「人間界の進歩は目まぐるしい……この200年で凄まじい違いだ」

 兄さんは一瞬遠い目をした。確かにこの街の変化を見れば、昔の面影は神殿にしか残されていない。

「どのように変わったんですか?」

 私もテーブルの上に手を重ねた。話は長くなりそうだ。

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