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「言う通りにするから、その子を放せ」

 私は剣を放した。カシャンと音を立てて、私は無防備になる。魔の為に人が死ぬ所など見たくは無いんだ!

「ルナリートさん!私の事など構わずに逃げてください!
貴方は……この世界に必要な方です!」

 少女はそう叫ぶと、魔の持つ刃を握った!少女の手から大量の血が流れ出る。本気なのだろう。

「人間の……少女はみんなこうなのか?」

 私は、自分の身を犠牲にしてまでも私を逃がし……この世界の為に死のうとするこの少女の姿が、儚くも懐かしかった。

「動くんじゃない!喋ってもダメだ!この娘を殺すぞ!」

 殺すだと?冗談じゃない。私の為に人間を二度も死なせはしない!

「そうだ……動くなよ……今から俺の炎で焼き尽くしてやる!」

 魔に力が集まる。暗黒の炎を私に放つ気のようだ!

「死ねぇぇぇぇぇぇ!」

「キャァァ!」

 目の前が炎に染まる!しかし……

「死角を増やしたのが命取りだ」

 炎が炸裂する直前に私は自身を転送させたのだ。

「滅炎!」

 私は魔の体に向けて凝縮した炎を放った!

「フィアレス様ァァ!」

 魔は完全に消滅した。眠りから醒めていきなり戦いとはな。黒幕は……王子フィアレス!私にまだ怨みを持っているんだろうな……それはそうと!

「おい!大丈夫か!?」

 手が血塗れになって座り込んでいる少女に私は問いかけた。大丈夫なはずはないだろう。

「はい、大丈夫です!でも良かったぁ……貴方が無事で」

 少女は私の顔を見て微笑んだ。何という強い人間!自分の身よりも他人の事が心配か……

「手を見せてくれ」

 私が心配しながらそう言うと、少女は恐る恐る深い傷が出来た手を差し出した。

「何て無茶な事をするんだ!これに懲りたら、二度と魔には近付くんじゃないぞ!」

 私はそう言って『治癒』の神術で傷を完全に治した。

「あ……ありがとうございます!申し送れましたが、私はシェルフィアです。この城で料理を作っています!さっきは、疑って本当に申し訳ありませんでした!貴方が皇帝の弟様である事……信じます!」

 少女シェルフィアは、私に向かって何度も何度も頭を下げた。……そして、心なしか顔が赤らんでいた。

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