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「皇帝様の弟様ですか!?確かに、目は似ていますけど。それなら、何でこんな場所にいるんです?」

 確かに、この場所に突然現れるのは不自然だ。皇帝の弟ならば?皇帝!?

「兄さんは皇帝なのか!?」

 私は思わず叫んでしまった!これでは、私が兄さんの事を知らないのと同じじゃないか!

「やっぱり貴方は?侵入者!」

 侍女……いや少女は背を向けて走り出そうとする!

「待ってくれ!」

 私は少女の肩を掴んだ。すると、少女は涙目で振り返る。この世の汚れた部分など知らないような、純粋で優しい目をしている。

「放してください!」

 そんな遣り取りをしている間だった。

「ギィィ」

 私の後に続いてきた影があったのだ!

「動くな!」

 私が驚いて振り返ると、そこには5体の魔が立っていた。鋭い剣を携えた人型の魔だ……恐らく、私の後に続いてこの城に侵入したのだろう。背後に警戒を怠るなんて……不覚だった。

「魔物!」

 逃げようとしていた少女が青褪めた顔で立ち竦む。

「俺達は、上級魔……お前ら人間がどう足掻いても足元にさえ及ばん。俺達は、ハルメスを殺しに来たのだ!」

「ハルメスは、人間界を侵略するのに一番目障りなんだよ!」

 魔が口々に叫ぶ。私の見た所、こいつら一人一人の生命力は30000程度。確かに人間では歯が立たないが……

「お前達は……私の事を知らないのか?」

 私はそう言って、『力』に意識を集中させた。髪は銀色に変わり、目は真紅に染まる。

「生命力250万!貴様は……獄界を荒らしたルナリート・ジ・エファロード!」

 魔は後退りする。しかし……

「……これは好都合だ!ルナリートを倒せば、『あの方』より多大なる褒美が出るぞ!」

 すると、魔の生命力が増大した!一人10万……この200年で魔も強大化したという事か……『あの方』?それより!

「君は早く逃げろ!ここにいるだけで、殺されるぞ!」

 私は少女に叫ぶ!戦いの余波だけで人間なら消滅するだろう。

「でも、あなたは!?」

 少女は震えながらも私の心配をする。

「私はこいつら如きに負けはしない!早くこの事を兄さんに伝えてくれ!ルナリートが帰ってきたと!」

 私は少女の背中を押した。すると少女は走り出す!

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