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 その後は、地図の通り水路まで辿り着いた。入り口は、神術で封印が施されていたので解除する。中は暗い迷宮のようだ……

 

〜追憶の幻影〜

 地下水路……ここは、丁度城の外堀の地下になる。幅、高さ共に2mぐらいの狭さで、膝の下ぐらいまで水が流れている。

「水が冷たいな」

 私は呟いた。今の季節は冬だろうか?だが、眠りに就く前程寒くはない。冬の始まりといった所だろう。

「うん、寒いわー。それにしても、この通路は暗いわねー……えいっ!」

 元の姿に戻ったリバレスが神術を使う。結界に焦熱を封じ込めた球体を作り出したのだ。

「器用だな。これで、前もはっきり見えるな!」

 その明かりで私達は、地図に示された通りに通路を進んでいく。この地図が無ければ、間違いなく迷宮で迷っていただろう。しばらく歩くとやがて違った風景が見えてきた。水路が途切れて、大理石の床に変わったのだ。そして、その先には長い階段が続いている。階段にさしかかろうとした時に、私は結界がある事に気付いた。この結界は、天使や人間にも効果のある物理的結界だ。これを破らなければ先には進めない仕組みだ。兄さんは、この城をこの結界で守り『魔』や悪意ある『人間』の侵入を防いでいたのだろう。

「この先に兄さんがいる」

 私は、体を『光膜』で保護して結界に向かって走った。

「パァー……ン!」

 結界が破れる。後は、城の中にいるであろう兄さんに会うだけだ。私は、階段の上の隠し扉を開けた……

「ギィィ」

 光が漏れてくる。隠し扉の先……そこは……

「厨房みたいねー」

 そう、城の中の厨房だった。様々な食器類、調理器具、そして食材が所狭しと並んでいる。数百人分の料理は作れるだろうな。

「兄さんは、水路の行き先に何故こんな場所を選んだんだろう?」

 私は不思議だった。私は、てっきり兄さんの部屋に直結しているだろうと思っていたのに……

「あなたは!?」

 私とリバレスが首を傾げていると、一人の侍女に見つかってしまった!幸い、リバレスは一瞬で食器に変化したので彼女に見えたのは私だけだろう。いや、城の兵でも無い私がこんな所にいるのは十分に怪しいな……正直に訳を話すか?

「私は怪しい者じゃない!……私の名はルナリート。ハルメスさんの弟だ」

 私は侍女の目を真剣に見つめて答えた。偽りでない事をわかってもらうためだ。

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