ハルメスは叫んだ。フィグリル皇国城の窓から……空は夕闇に染まっていた。それは訪れる長い夜と、安息の朝の遠さを物語るような虚しい色だった。ルナリートが目覚めるまであと100年……それは、ハルメスにとって気が遠くなるような時間に思えた。
〜150年後『獄界』
「お前達、計画は50年後だ!それまで、存分に力をつけておけ!」
獄界の宮殿のテラスから群集を見下ろすフィアレスは、魔を鼓舞するために叫んだ。
「ウォォオォォ!」
数万……いや、数十万以上はいるだろう。魔の大軍は歓喜の叫びを上げる。この150年間、人間界への侵略は小規模なものだった。それは、50年後に全勢力を使う為……力を温存しているのだ。彼らの指揮官は、フィアレス・ジ・エファサタン。獄王の息子だ。
天界の『計画』とは別に、強固な『目的』を持って彼は動いている。フィアレスは150年で力を増した。ルナリート・ジ・エファロードに負けた事が悔しかった。この星……シェファで最強の力を持つのは、『ロード』では無く『サタン』であると信じて生きている。
だからこそ、50年後に証明する。全てが動き出す『時』に。
〜醒めぬ夢〜
「ルナさん、ルナさん」
何も見えない暗い闇……その中で、私は懐かしい声を聞いた。
「誰だ?」
私は動くことも出来ず、闇に向かって問いかけた。
「……フィーネですよ。私は生まれ変わったんです!」
紛れも無い。フィーネの声!涙が止め処なく溢れる。もう聞けないと思っていたのに!
「フィーネ!会いたかった!会いたくて会いたくて……でも、私は動けないんだ!こっちへ来てくれ!」
私は涙で何も見えないままに叫んだ!すると……愛するフィーネの姿が闇に浮かび上がる!
「私も会いたかったですよ。ずっと……でも、これ以上傍には行けません」
フィーネが悲しそうに俯く……もっと近付きたいのに!
「何故だ……何故なんだ!?」
私は訳がわからずに声を張り上げる。すると……
「フフ……相変わらず馬鹿ね」
フィーネの前にジュディアが立ちはだかったのだ!
「ジュディア……貴様!そこをどかないなら、今ここで息の根を止めてやる!」