そして、服を持った店員とフィーネは奥の試着室へと消えていった。
「(ルナも人が悪いわねー……わざわざ、杯を出さなくても銀貨はいっぱいあったのにー)」
リバレスは呆れたように言った。私も普段ならこんな事はしないのだが。
「(私は、フィーネの服を見て『田舎者』と侮辱するような目をされたのが許せなかったんだ。)」
私は正直な理由を話した。フィーネが、他の虚勢を張るだけの者に見下されていい筈がない。
「(なーるほどねーそんなにフィーネの事が……ねー)」
きっと、リバレスが指輪に変化していなかったら、からかう様な顔で笑われている事だろう。
その後、綺麗な服を着た可愛いフィーネが現れた。
「驚いた!フィーネは、そんなに美人だったのか!」
私は思わず思った事を口にしてしまった!白のシルクのドレスを着たフィーネだった。私が、今まで見たフィーネは色褪せたようなワンピースや、皮のコートだった。しかし、今真っ白なドレスを着たフィーネはとても輝いて見える!
「ルナさん、恥ずかしいですよぉ!これじゃあ、まるで花嫁さんみたいです」
花嫁?さすがにそれはまずいな……いや、買っておいて損はないか。きっとフィーネも喜ぶだろう。
「よし!その服をまず貰うことにするよ」
私は、店員にそう言った。店員も笑顔で頭を下げる。
「ありがとうございます!銀貨150枚になります!」
150枚か、杯一つで確か2000枚ぐらいの価値はあるからまだまだ大丈夫だな。
「ルナさぁぁーん!」
フィーネが恥ずかしくも嬉しそうに慌てる様子を余所に、私は次々と服を買った。
そして、店員達に見送られながら私達は店を出た。今のフィーネは、薄いピンク色のシルクのワンピースの上に、柔らかい白の毛皮のコートを着ている。そのあまりの綺麗さに、道行く人が振り返る程だ。
「よく似合ってるよ。いい買い物をしたな」
私は恥ずかしそうに横を歩くフィーネに声をかけた。こんなに人から注目されるのは初めてだったのだろう。
「すごく恥ずかしいけど、すごく嬉しいです!ありがとうございます!」
彼女は頬を赤くして満面の笑みを見せた。この笑顔が見れるなら安い買い物だ。
その後、私達は世界中の雑貨が売っている巨大な市場を訪れた。多くの人と物でここは溢れている。
「すごい人ですねぇ!あっ、あれ見に行きましょうよ!」
フィーネは珍しい物を見ては楽しそうに駆け出していく。このままじゃあ、はぐれてしまうぞ。