〜シェルフィア対キュア〜 ルナさんとフィアレス・ジ・エファサタンは聖域を離れたが、私はキュアと睨み合いを続けたままだった。 「さて……死ぬ準備は出来たかしら?」 彼女は不敵な笑みを浮かべて挑発してくる。乗ってはいけない。 「私は争いが嫌い。この戦いが終われば、この星には種族を越えた揺るぎ無い平和が訪れるわ。だから、出来る事ならばあなたも傷付けたくは無いの。獄王を争い以外で止められないのは解る。でもあなたは」 其処まで言った瞬間だった! 「キィーンッ!」 「ブシュッ!」 不意打ちの攻撃!私は一撃は剣で受けたものの、二撃目は肩に浅い傷を負ってしまった! 「ママッ!」 離れた聖域の瓦礫の陰からリルフィが叫ぶ!話し合いで解決すると思った私は間違っていた。 「シェルフィア、お前は私を愚弄するのね。私はフィアレス様の妻として、魔として此処に何をしに来たか解っているでしょう!?」 言う通りだ……。彼女の言葉で私は迷いを捨てた。戦おう。 「キュア、本気で行かせて貰うわ」 私は内に秘めたる力を解放した。私は、転生する時に多くの力に助けられた。人間の力、天使の力、魔の力……そして、神と獄王の力!それらの力の一部は、私の中に宿っているのだ。 「究極神術『光膜』!そして、究極魔術『暗幕』!」 光の膜が私を包み、闇のカーテンがその周囲を覆った。 「それでいいわ。お前が、神術も魔術も使いこなすのは知っている。でも関係無い!それ以上の力を剣に乗せて、攻撃するだけよ!」 彼女が高速で私に向かう!目で追うのがやっとの斬撃! 「キキキキィーンッ!」 剣で防ぐが、一撃一撃が重い!このままでは押し負ける! 「ヒュッ!」 咄嗟に私はバック転を繰り返して剣を避けた!その瞬間、彼女に隙が出来る! 「えいっ!」 私は渾身の力を込めて、足払いを炸裂させる!するとキュアは転倒した! 「くっ!」 「終わりよ!」 私は転倒しているキュアに剣を振り下ろす! 「ザクッ!ザクッ!」 地面が抉れる! 彼女は転がりながら巧みにそれを避けたのだ。 「フィアレス様の為にも負ける訳にはいかないっ!」 「ブシュッ!」 彼女は私の剣を捌き、一閃が私の腕を掠めた!傷は浅いが、光と闇の防御膜が無ければ腕を切り落とされていただろう。 「ルナさんとリルフィ、そして皆の為に私も負けない!」 私は剣と共に、禁断神術『滅』を連続で発動させる。 「シュウゥゥ!」 「ザシュッ!」 私の攻撃がキュアに届く!だが、彼女はそれを気にも留めず立ち上がった! 「お前の剣は大した事無いけど、強力な神術が厄介ね」 ならばどうする気だ?私は彼女の次の手を考えた。 「神術を使わせる隙を与えない!」 私が思い付くのと同時に彼女はそう叫んだ!彼女の動きが加速する! 「キキキィーンッ!」 「ザクッ!」 私の攻撃は殆ど当たらず、彼女の攻撃ばかりが私の体を捉える。このままでは!? 「(ママ!今から2秒後に出来るだけ敵から離れて!)」 「(ん?解った!)」 リルフィの言う通り、私はキュアの剣に一撃を放った後唐突に離れた。 「逃げるつもり?え!?」 彼女が力の気配に気付いて振り向いた時にはもう遅い! 「カッ!」 リルフィの指から、神のみが使える『光(sunlight)』が発せられていたのだ!その威力は、ルナさんには遠く及ばないが私の術よりも遥かに強力だ。幼くしてこの力……。一体リルフィは何処まで成長するのだろう? 「キャァァ!」 その場にキュアは倒れた。鋭い光が彼女を貫通した筈だ…… 「あなたの負けよ。負けを認めてくれたら、傷を回復!?」 私が其処まで言った時だった。 「フフフ……やっぱりね。娘の攻撃が来ると思ったわ」 彼女は立ち上がる。無傷だ! 「フィアレス様に言われていたから。娘に注意しろって」 そうか、予め攻撃が来る事を想定していれば避ける事は出来る。 「でも、凄い攻撃ね……。剣が粉々よ」 彼女は唯の鉄粉と化した剣を指差す。そして、不気味な笑みを浮かべた。私とリルフィの力を併せれば、決して彼女の力に負けはしない。なのに何故余裕の笑みを浮かべる事が出来る? 「第二部といきましょうか」 その言葉の直後、彼女は翼を開き空へと飛び立った。遠くから彼女の声が谺する! 「雲の上からの攻撃、目に見えない闇の攻撃を受けてみるがいいわ!」 しまった!今は夜……。しかも雲の上に隠れられれば視認は不可能だ。どうする!? 「ママー!危ない!」 一体何が起きた!? 「ゴゴゴゴ!」 リルフィと私を含む半径数百mが闇の螺旋に飲み込まれている!?これは、禁断魔術『死闇』! 「ママ!助けてっ!このままじゃ螺旋に食べられちゃうわ!」 「リルフィ!心配要らない、今助けるわ!」 仕方無い。今迄試した事は無いけど、厳重に制御されている内なる力を全て解放しよう! 「シュゥゥ!」 体が炎のように熱い!皮膚が発熱で赤く変色してゆく!1分……否、30秒以上は持たない! 「禁断神術『滅』!」 普段私が使用可能な『滅』の数十倍も巨大な『滅』が発動した!死の螺旋は音も無く消えて行く。 「リルフィ、パパには内緒よ」 私はそう言って、螺旋の消えた聖域に立つリルフィの頭を撫でた。彼女は言葉の意味が解らずに首を傾げる。 だって内緒じゃないと困る。私が『空を飛べる』事をルナさんに知られたら、甘えられないから。 神術で編んだ翼。ルナさんの『光の翼』程じゃないけど、輝いている。 私は『転送』で雲の上まで移動し、『翼』でキュアにそっと近付いた。 「加減は出来無いからごめんね」 私はそう言うと、オリハルコンの剣に『光(sunlight)』を込めてキュアに振り下ろした! 「ピカッ!」 「ドゴォォ……ン!」 光が、空諸共彼女を裂き、衝撃波が聖域を激しく揺らしたのを感じた直後、私は力が空っぽになり聖域へ落ちていった。 「ママー!」 私を心配する優しい娘の声…… 「フワッ」 あれ?落ちたのに何の衝撃も無い。一体? 「もう、ママ!自分の命を大事にしてって言ったでしょー!」 私はリルフィの『保護』と『治癒』に包まれていた。 「はぁい……。ごめんね」 聖域に叩き付けられ気を失っているキュアを確認して、私は目を閉じる。その時だった。 「カッ!」 遠くで、これ迄感じた事の無い強大な光が発現した。同時に、夜空を全て吸い込むような完全なる闇も顕れる! 刹那の後、星が激しく振動を始めた! 「ルナさん。皆」 私とリルフィは手を合わせて祈った。 | |
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