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 私は聞かずにはいられなかった。他にすべき事もあるだろう?

「ああ、それだけだ。他に何が出来る?今、人間界にいる少数の魔を倒すのか?それもいいかもしれない。だが、その程度の魔と人間が戦えないようなら……人間界に未来はない。それより、お前達が力を付けるのにはちゃんと理由がある」

 兄さんの言う事は理解出来る。でも、今人間が襲われる事も見過ごせはしないだろう?私はそう思ったが、話を最後まで聞く事にした。

「その理由とは?」

 シェルフィアが深呼吸して訊く。恐らく、話の重さに緊張しているのだろう。

「70日後の為だ。70日後……お前達3人には『天界』に向かってもらう」

 私達が天界!?一体なぜ!?私には天界に戻る資格などありはしない!

「ルナ、お前の言いたい事はよくわかる。天使の指輪は無いからな……だが、それは問題じゃない。指輪を失った天使が天界に戻れないのは、天界の入り口に強力な結界が張られているためだ。しかし、お前が力を使えば結界の一部を破る事など容易い事なんだ。それに、俺達はエファロード……現在の神シェドロットの子だ。神に会って考えを変えさせられるとしたら、間違いなく俺達しかいない」

 そういう事か……だがそんな大役を私が?

「話を続けるぜ。力をつけるのは、『贖罪の塔』を上るために必要だからだ。贖罪の塔は人間界と天界を結ぶ塔……俺達の内どちらかがそれを使って天界に向かうのは、予測されている事だろう。間違いなく塔には力を持った天使が配備される。エファロードを止める為に配備されるんだ。並大抵の天使じゃない事は容易に想像がつく」

 私は、そこでどうしても言いたい事があって口を挟む。

「……『転送』を使えばいいのでは?」

 転送を使えば、不要な争いは避けられるはずだからだ。

「確かにな。それが出来れば一番手っ取り早い……だが、天界の構造を説明すれば納得がいくだろう。天界は、神の力によって生まれ維持され続ける巨大なエネルギーの塊だ。その上を雲や大理石が覆っている。その外を結界が覆い、さらに『力を無効にする膜』に包まれているんだ。だから、転送で天界内部に入る事は不可能だ」

 力を無効に!?そういえば、かつて私の力が神によって消された事がある。神官ハーツと対峙した時に。

「だから、贖罪の塔を上らなければならないと……そこで、先に進む力をつける為に70日間トレーニングをするという事ですね?」

 私は理解した事を確認する為に訊いた。

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