【第六節 証 】
翌朝、私とシェルフィアはリウォル王国へ行く準備をしていた。『転送』が使える今、長旅の準備は必要ない。
「どうやって潜入しましょうか?」
私は兄さんに問う。それを誤ると、戦争を終結させるのは困難であると考えたからだ。
「潜入する必要はないぜ。まず、リウォル上空に二人を『転送』するんだ。その後、ルナが翼を開きゆっくりと本拠地であるリウォル城に降り立てばいい。勿論、『光膜』で体をガードしながらな。銃火器の集中砲火に遭う事を想定してだ」
一体何を言っているんだ!?そんな事をすれば、目立つ上に余計に敵に恐怖を与えるだけじゃないか!?
「皇帝!おっしゃる意味がよくわかりません!私達は何の為に攻撃を受けるのですか!?」
シェルフィアが叫ぶ!当然の事だろう。
「私にもそうする理由がよくわかりません。誰にも知られずに潜入する方がいいかと思うのですが?」
私も問い返した。今回の事は私の理解を超えていたからだ。
「まあ、そう思うのは当然だろう。理由は、まずリウォルに潜入するのには手間がかかり過ぎるという事だ。王国の警備は厳重そのもの。うまく潜入出来ても、国王の下まで行くのは至難だ。勿論、これらはお前達が力を使わない場合だ。だが、ルナが空から降り立ちどんな攻撃も通じないという事を理解させると、お前達はすんなり王に会う事が出来るんだ。それには、お前達の姿を多くの人間に確認させる必要がある。200年前の事を思い出せ。かつてのリウォルの街の人間はルナをどう思っていたのか?その伝説は今でも語り継がれているんだ」
私は曖昧ながらも話を理解出来た。確かに……200年前、私とフィーネは歓迎されていた。しかし……本当に今もそれが?
「わかりました。あなたがそう言う以上は、勝算があっての事でしょう」