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『私は強くない。唯、私を大切にしてくれた人がいたから。お父さんやお母さん、そして、ルナさん』

 

 驚いた!今まで19年間……何度と無く、フィーネの夢は見てきた。でも、でも!フィーネ本人が話してきたのは初めてだった!

「……私はシェルフィア。どうして、あなたは私の心の中にいるの!?」

 周りの風景が闇に戻り、フィーネの姿だけが私の方を見ていた。

『……私は、200年前に死んだ。……でも、ルナさんのお陰でシェルフィアとして生まれ変わったの』

 フィーネは、悲しそうな顔をして私の目を見つめる。

「シェルフィアは私よ!私はあなたのものじゃない!」

 私は叫んだ!私の心は私のものなんだ!

『そう、だから……あなたも私もフィーネでありシェルフィアなの。本来……人の魂は生まれ変わると、全ての記憶を失う。でも、私はルナさんと約束した。だから、シェルフィアとして生まれ変わっても……フィーネとしての心も消えていないの』

 フィーネは微笑んだ。嘘偽りの無い表情……でも、そんな事は信じられない!

「私は私なの!フィーネなんかじゃない!私の心から出て行って!」

 私は、フィーネを力の限り押そうとした。しかし!

『フィーネを拒めば……シェルフィアも消えるわ。私達の心は二つで一つ。その為に、今からあなたに私の全てを見せる』

 フィーネがそう言うと、私の体の中に入ってきた!

 

「あぁぁ!」

 

 頭が痛い!体中が熱い!……苦しい!意識が混濁する!

 

 ……混ざり合った意識の中で、フィーネの記憶の映像が鮮明に流れてきた。記憶だけでなく、心の動きも全て感じられる。

「どうして……どうして争いは無くならないの!?なぜ殺しあわなくちゃいけないの!?……私はどうすればいいんですか!?」

 ここは、魔物によって廃墟と化した村……そこで、『私』は無意味な争いを嘆いているんだ。

「……君はよくやっているよ。今は……争いが無くならないのは仕方ないんだ。でも、それを少しでも無くすために私達はここにいるんだろ?」

 あなたは!ルナリートさん、いえ、ルナさん!嘆く私を優しく慰めてくれましたね。それが、すごく心強かったんです。ルナさんの事を少しずつ思い出していくと……私の心はどんどん満たされていきます。

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