【第三節 交錯する記憶と存在】
ここは何処?私は、誰?
見渡す限り闇……その中で私は一人歩いている。いや、歩いているというよりも空間に浮きながら前に進んでいるというべきだろうか?そんな事は今の私にはどうでもいい事……私は、私じゃないのだから……
私は、『シェルフィア』のはず……なのに、どうしても心がもう一つあるような気がする。
闇の中を一体どれくらい歩いたかわからない。それでも歩き続けていると、微かに光の破片が浮かんでいるのを見つけた。
「これは何?」
光の破片に私の指先が触れる。すると!
「……化け物……ルナさん、あなたも魔物なんですか!?」
私の脳裏に見たことも無い光景と声が現れた!どこかの洞窟のような場所で、ルナリートさんに向かって叫んでいる?頭が痛い……ルナリートさんとはさっき会ったのが初めてなのに!?
私は、光の消えた闇の中を再び歩き出した。すると、今度は急に闇が晴れて夕焼けの丘に変わった。
その丘に『私?』は立っている。一体何をしようとしてるんだろう?
「……私が、魔物を全て倒しに行くんです!私から全てを奪った魔物を!」
何故だろう?そう叫んでいる『私』……いや、『もう一人の私』の悲壮な決意が伝わってくる。お父さんもお母さんも、魔物によって殺されたんだ。それで、ルナリートさんに戦ってくれるように頼んだ。
そう……優しいルナリートさんは、私のわがままを聞いてくれて……一緒に旅をする事が出来たんだ。
もう一人の私……その名は『フィーネ』……私の心のもう一人の住人……でも、あなたは私に過去を見せるだけなの?
「……例え脆くても……この素晴らしい世界に生を受けて、たくさんの人に恵まれて一生懸命生きることはきっと幸せなんです」
フィーネ、あなたは両親が殺されても……魔物に虐げられてもこの世界が素晴らしいと言う。しかも、両親の墓前で……