神の子……エファロードは、ほとんどが神と同じように創られる。それに、母親を必要としない。神は単独で子を創るからだ。なのに、私達『二人のエファロード』は『愛』を命題とされ……女性を愛する事が出来る。愛する人の為に命を懸ける。神は何故……私達のようなエファロードを生み出したのだろう?何故……二人の子が必要だったのだろう?
「はい、でも、私達が二人いる事には何らかの強い意味があると思います。きっと、生まれる前から決められていた『使命』……そんなものがあるのでしょう……それでも、私にはフィーネという愛する人がいて……ハルメスという兄がいるだけで満足です」
私は正直な今の気持ちをハルメス兄さんに伝えた。すると、兄さんは嬉しそうに笑い出した。
「はははっ!やっぱり、お前は俺の弟だよ。その通りだ、エファロードの意味や使命なんて関係ない!俺達は、自分の信じる物……そして愛する者の為に全てを懸ける。200年後、期待してるからな!」
兄さんは笑う。力強く……そして強い心を持って。
「はい!200年後には必ず……誰もが、平和で幸せになれる世界にしましょう!」
私は、そう叫ぶと同時に前のめりに倒れそうになってしまった。それを兄さんが支える。もう、体力の限界のようだ……
「約束だぜ!今から、お前を安全な場所へ『転送』させる。リバレス君はどうするんだ?」
兄さんはリバレスにそう訊いた。私は、リバレスの選択がどちらでも構わない。私と離れたくないならそれでもいいし、200年間兄さんと共に待っていてくれてもいい。でも、彼女の選択は私の思った通りだった。
「わたしはー……ルナと一緒に眠ります」
こうして、私達は『眠りの祠』に転送される事になった。その祠は兄さんが作ったもので、強力な結界が張られている上に周りからは何も見えない。フィグリルの街から東へ100km地点に浮かぶ小さな島……その中に『眠りの祠』はある。
「200年後、『心』を信じて戦おう!たとえ……この身が朽ち果てようとも!待ってるぜ……弟であるルナよ!」
それは兄さんが、眠る前に伝えてくれた最後の言葉だった。『この身が朽ち果てようと』は、少し大げさな気がしたが心強かった。祠には、ESGと保存食が完備されていた。食べ物一つ一つに『停止』の神術が施されており、腐る事はない。
私とリバレスは食べきれないぐらいの食糧を摂取した。200年間もの間眠って体を休める為には、特別な神術を要する。