暫しの静寂の後に、髪を撫でる穏やかな風が吹いた。その瞬間、『俺』は『私』に戻る。

 一気に力が抜けた……。背中の翼が消え、髪が銀からいつもの紅に戻る。

「ルナさんっ!」

「パパぁ!」

 私の愛する妻と娘が心配そうに抱き付いてくる。私は二人の髪をそっと撫でながらも、疲労で今すぐ眠りそうだ。

「心配しなくても、私は大丈夫だよ。だから、今はちょっとだけ眠らせてくれ」

 私はそう言うと、シェルフィアの膝に頭を寄せた。

 

 次に目覚めたら、獄界の植物を切り倒して世界中の人間を目覚めさせる。その次は、半年後に備えなければ。

 シェルフィアもリルフィも良くやってくれた。まさか、リルフィがあれ程の力を発揮するとは……。

 

「おやすみ」

 

 私の意識が眠りに溶けて行く中、澄んだ優しい声で二人は私にそう言った。

 

 

目次 第四節