私達が塔に入った瞬間……私は扉が開いた理由を理解すると共に言葉を失った。

「久し振りだな」

 塔の1階に立っていた者……それは……

「セルファス!」

 大柄で筋肉質……天使特有の曇りの無い金の髪……そして、強い決意を秘めた目でかつての友は私を見据えていた。

「お前は変わってしまったな……お前は俺が誰より尊敬する存在でライバルだったのに……そして、お前はエファロードであるというのに天界の為すべき責務を阻害しようとしている。俺は、力司官であり、かつての友としてお前の愚行を見逃すわけにはいかない!」

 セルファスは一瞬悲しい顔を見せたが、すぐに私を睨みつけ剣を抜いた。天界で鍛え上げられた聖剣だ……司官のみが持つ事を許される。

「私は、自分の信じる道を進む。お前も知っているだろう?人間が生まれた意味を!?真の心を持たない天界の計画……私は断じて許さない!だから……それを阻むのならば、私はお前と戦う。例え……友としての心を失っていなかったとしても!」

 私はそう叫び、剣を抜いた。気迫が、大理石のフロアに充満する!

「初めから人間の辿る道は決まっていたんだ!神の計画は絶対だ!俺は、天界を守る!お前が何かを守るように!」

 戦いは避けられない。セルファスとは一対一で戦わなければならない。私はそう悟った。

「シェルフィア、リバレス!離れていろ、私一人で戦う!」

 私が叫ぶとリバレスはすぐにフロアの端に避難した。彼女は、私とセルファスの因縁を知っているからだ。

「ルナさんっ!私も戦いますよ!」

 しかし、シェルフィアは私を心配して近寄ってくる!

「ダメだ!こいつとだけは一人で戦わなければならない!心配はいらないから、リバレスと一緒にいてくれ!」

 私が真顔でそう叫ぶと、決意を理解したようでシェルフィアは走り去った。

「行くぞ!」

 この瞬間、私とセルファスは力の全てを解放した!セルファスの力は……200年前とは比べものにならない!

「キン!」

「ガキィー……ン!」

 力と力がぶつかりあう!その衝撃で空気が割れるように振動する!だが……

「まだまだその程度では、私には勝てないぞ!」

 セルファスが剣を振り下ろした一瞬の隙をついて私は、聖剣ごとセルファスを弾き飛ばした!

「ドゴォォ……ン!」

 奴は壁に激突して地面に倒れた!だが、この程度で諦める奴ではない事はよく知っている。

「流石だな。やっぱ、ルナは強いぜ!」

 やられたのに、セルファスは嬉しそうだった。やはり……友の心は失っていない。私は直感した。

「高等神術……『雷光召喚』!」

 奴は次の瞬間、神術を発動させた!200年前には考えられない程の発動スピードだ!

「バリッ……バリバリバリ!」

 空間が強い電場に変わる!並の天使なら、これで即死だろうな……

「光膜!」

 私は、体を光の膜で包み完全に雷を遮った!

「くっ!これも通用しねぇな!もう小細工は無しだ……全力で行くぜ!」

 セルファスはまだ本気を出していなかったのか……恐ろしい成長だ!

「究極神術……『雷光』!」

 奴はそう叫び、高等神術より上の究極神術を発動させた!一体何を!?

「行くぜぇぇぇ!」

 何と、奴は『雷光』を身に纏い聖剣と共に突進してきたのだ!

「ぐぁぁ!」

 剣は避けたのだが雷光が私を直撃する!私は、腕に火傷を負った!

「はぁ……はぁ……思い知ったか!?」

 倒れた私にセルファスが近寄る!しかし……雷光を纏うセルファスも無事な筈がない。全身が火傷のように変化しつつある!

「セルファス……お前の決意はよくわかった。お前が命を懸けている以上、私も全力を出す!」

 私は翼を開き、瞬時にセルファスとの距離をあける!

「禁断神術……『滅』!」

 空間が萎縮する。そして消滅する!私は強大な『無』のエネルギーを放った!

「これが……ジュディアを傷付けた術か!?確かにこれじゃあ、どうしようもねぇな!」

 ジュディア?そういえば、奴はジュディアを愛していた。

「うぉぉ!」

 何を考えているのかわからない。何とセルファスは『滅』を避けずに、真っ向から立ち向かったのだ!

「やめろ!死ぬぞ!」

 私は叫ぶ!私はセルファスを殺すつもりなど毛頭ない!

「敵に情けかよ!?相変わらずお前は甘いぜ!だが俺はこんな術で死なない!」

『滅』と対峙するセルファス……その表情には確固たる自信が溢れている!

「わかったからやめるんだ!」

 私の声はもはや奴には届いていない!

「ぐっ……うがぁぁ!」

『滅』がセルファスを飲み込もうとした瞬間!

「パァァ……ン」

 奇跡が起きた!小規模とはいえ、『無に帰す力』を一人の天使が消し去ったのだ!

「やったぜ……俺の……勝ちだ」

 何に勝ったのかはわからないが、力を使い果たしたセルファスはその場に倒れこむ。敵の筈なのに、私は奴に歩み寄った。

 

 

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