第二十節 (けい)() A

 

 次に目覚めた時、わたしはルナの胸ポケットの中に居た。どうやら、また上層に向かっているみたいだ。わたしはルナに、戦いの後の話を聞いた。

 ノレッジは倒れてから直ぐに意識を取り戻し、ルナにこんな事を言ったらしい。

 

「僕の完敗です。でも今は、妙にスッキリした気分です。僕が……、間違ってましたね。僕は君が羨ましくて、追いかけて、それでも届かずに悔しかった。君を尊敬していたのに、段々それが憎しみに変わっていったんです。

 子供の頃から君と一緒で、劣等感を抱いていました。それで、君が居なくなって僕は優越感に浸りました。でも僕は虚しかった。何故でしょうね? 僕は今解ったんです。僕は、君に認めて欲しかったのだと。僕は最低です……。セルファス君と君が夜中に競った時も、天界での裁判の時も僕は逃げ出してばかりだった。君達は、僕にとっての大切な大切な友達だったのに!」

 その後彼は、わたしを回復させる為に、「高濃縮されたESG」をルナに渡した。今わたしがこうして元気なのは、ノレッジのお陰だと言っても良い。

 ルナはノレッジを許し、この戦いが終わればまた友達になる事を約束した。ノレッジはずっと泣いて謝っていたらしい。わたしも、彼を許す事にした。

 この後にはジュディア、そして天界と衝突するだろう。其処でルナが選ぶ未来は、わたしにはよく解る。

 生まれてから「最後の刻」まで、わたしは彼の傍に居るのだから。




目次 第二十一節