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「(うんっ!パパもママも自分の命を大事にしてね!)」

 

「ガキンッ!」

 剣と剣がぶつかり合い、火花が散る!

 この星でそれぞれの戦いの火蓋が切られた!

 

〜ルナリート対フィアレス〜

「行くぞ、フィアレス!」

「今回の僕は負ける気がしない!」

 俺達は共に聖域から離れ、星の上空……雲の上まで上昇していた。戦いの余波で周りの者を傷付けない為だ。

 眼下には雲と海、上空には一面の星空。最後の戦いの場に相応しいだろう。夜明けと共に、この星は生まれ変わる。俺達の勝利と共に!

「ゴゴゴゴ!」

 フィアレスの体を闇物質で出来た鎧が包む。

「シュゥゥ!」

 俺の体が『滅』で出来た鎧で包まれる。そして!

「始まりの神術……『光(sunlight)』!」

「終わりの魔術……『闇海(darksea)』!」

 各々の剣が、この星で最も強力な神術と魔術を宿す。これで、一振り毎の破壊力に究極の術の力が加算される!

 無論、術を発動させ続ける事による精神力の消耗は著しい。だが、命を賭して戦うべきは今なのだ!

 

「ギンッ!」

 

 一閃!互いの剣が交わった!途轍もなく重い一撃!

 目の前で光と闇が弾け、次に音が聞こえ……最後に衝撃が走った。衝撃は、空間を捻じ曲げ雲を裂く。そしてその波動は、星の表面を細動させる!

「剣が生まれ変わったね……。凄い技術だ。エファロードの力を支える程の物を人間が造り出すなんて予想外だよ!」

「人間は無限の可能性を秘めている。此処で滅びるような事があってはならない!」

 互いに不敵な薄笑みを浮かべた。次の瞬間には激しい攻防が始まる事を理解しているからだ。

「フッ」

「キキキキィーン!」

 転送と、繰り返される鍔迫り合い!力もスピードにも優劣は無い。最後まで強い精神力を持ち続けた方が勝つだろう!

 だが、このまま消耗戦が続けば二人とも精神力を使い果たして死ぬ。一瞬で決めてやる!

「フィアレス……終わりだ」

 その言葉で彼は一歩退く。俺は精神力を一気に燃焼させる!

「『光』よ!今こそ我に真なる力を与え給え!」

 体が『光』に包まれる!更に剣が『光』そのものと化す!

 肉体も精神も……光に溶けて無くなりそうだ!だが、この攻撃が決まれば戦いは終わる!

「その姿!?光そのものだね……初めて見たよ。それがエファロードの最終形態!」

 フィアレスは少し驚いた口調でそう言うと、魔剣の柄を両手で握り先端を真下に向けた。何をする気だ?

「受けて立つよ。君が全ての力を此処で出し切るんだ。僕も……見せない訳にはいくまい!」

 音が消えた。そして、私の光に照らされていた彼の姿が漆黒に飲まれる!

「『闇』よ!我と同化し、偽りの光を消し去る力を!」

 一瞬、何が起こったのか解らなかった!だが間違い無い。獄界の『闇の海』を召喚し、自分自身と周りの空間に取り込んでいるのだ!

 

「我らが誕生し、65億年の月日が流れた。その間、完全に勝敗が分かれた事は無かった。だが此処で、ロードが勝ち……因縁に終止符が打たれるのだ! 」

「深獄の管理の押し付け、中界の侵略……。ロードの暴挙は枚挙に暇が無い。真なる正義はサタンであり、我の元にこそ統制された世界は実現される。それを証明する時が『今』である!」

 

「カッ!」

 

 この星の歴史上、最大の力同士が衝突した!

 衝撃は見渡す限りの空間を消し去り、海を割る。その余波が宇宙空間に届くと共に、星が激しく揺れ始めた!

「うぉぉ!」

「ぐおぉぉ!」

 体が燃えるように熱い!精神が毟り取られるように痛い!実際に俺達の肉体と精神は一秒毎に尋常ならざるダメージを受けているだろう!

 だが、構わない!生命力を燃焼させるのは今なんだ!

 今にも消え去りそうな意識の中で、俺はシェルフィアとリルフィ……そして、人間達の事を思い浮かべた……

 

〜シェルフィア対キュア〜

 ルナさんとフィアレス・ジ・エファサタンは聖域を離れたが、私はキュアと睨み合いを続けたままだった。

「さて……死ぬ準備は出来たかしら?」

 彼女は不敵な笑みを浮かべて挑発してくる。乗ってはいけない。

「私は争いが嫌い。この戦いが終われば、この星には種族を越えた揺るぎ無い平和が訪れるわ。だから、出来る事ならばあなたも傷付けたくは無いの。獄王を争い以外で止められないのは解る。でもあなたは」

 其処まで言った瞬間だった!

「キィーンッ!」

「ブシュッ!」

 不意打ちの攻撃!私は一撃は剣で受けたものの、二撃目は肩に浅い傷を負ってしまった!

「ママッ!」

 離れた聖域の瓦礫の陰からリルフィが叫ぶ!話し合いで解決すると思った私は間違っていた。

「シェルフィア、お前は私を愚弄するのね。私はフィアレス様の妻として、魔として此処に何をしに来たか解っているでしょう!?」

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