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 神と獄王は争った。

 

 その波紋は大地を裂き、海を割り、犠牲となった生物が世界を血で染め上げた……

 そして、数万年にも及ぶ戦いで神と獄王は力を削られ、その無意味さを知り争う事をやめた。その後、神と獄王は力のほぼ全てを用いて、星を……惑星シェファを3つの小惑星へと分割する。

 小惑星はそれぞれ『天界』、『中界』、『獄界』と区分され、『天界』は神が、『獄界』は獄王が統治する事となる。『中界』は『天界』と『獄界』の中間に位置し、緩衝帯としての役割を持つ不可侵領域とした。

 

 こうする事によって、神と獄王は距離を置き平和に更なる進化を遂げていく。

 

 その後、『天界』に『天使』が、『獄界』に『魔』が生まれ、長らく平和が続いたのは歴史に残されている通りである。そう、神が獄界に断り無く『中界』に『人間』を多量に創り出す迄は。

 

歴史に残っていない事がある。

 

 神、獄王……即ち、エファロードとエファサタンの『継承される記憶』の中でさえ封印されている事が。

 

 神と獄王。それが知能及び力に於いて究極の存在となり、争いを始めた時の事だ。

 

 ある『魂』が、肉体を求めて地上に現れた。その魂は、穢れ無く……透き通る程に無垢だった。

 そして、内に秘めた力は神を……獄王をも凌ぐ。

 

 何の為に現れたのか?

 

 それも、『存在』の選択である。星を破壊する程に力を付けてしまった、二人を止める為の……

 だが、二人はその魂が生まれる事を赦さなかった。生まれてしまえば、自分達の完全支配が失われるからだ。

『魂』は、生まれる前に……意思を持つ事すら認められず、神と獄王の力で『深獄』に封じ込められる事となる。そして今日まで、『魂』は虚ろな空間の中で命ある者を呪いながら、永遠にも等しい『封印』という重苦を受けているのだ。

 

 封印された『魂』はこれ迄に、12を数える。

 

 罪の無い魂を生まれる前に封印する事。しかもそれが、自分達の地位を不動にする為という赦されざる恣意。

 その罪悪感に苛まれ、ロードとサタンは『魂の封印』に関する記憶を封じ、再び『魂』が現れる時にのみ記憶を呼び覚ますようにした。

 

 そして、歴史を捻じ曲げた。

 

『深獄』は、神、獄王の力でも滅する事の出来ない、強大な『悪魂』を封印する場所。

 悪魂は肉体を持ち、星の中で凄まじい力を奮い……生命を破滅させようと目論んだ。だから、深獄へ堕とされて当然の魂。それを倒した神と獄王は、長きに渡って賞賛を集め続ける。無論、罵倒を受ける事は無い。

 これが、代々継がれる歴史となる。

 

 だが運命の歯車は軋み、狂気を生み出す。

 

 フィアレスはルナリートに対抗する為、深獄へ注ぐ力を弱めた。神と獄王が、自らの役割を完全に果たす事によって、辛うじて保たれていた秩序が崩壊していく……

 

 そう……封印されし、12の魂に動く隙を与えたのだ。

 魂は、深獄を抜ける事は出来なかったが、更に深く深く潜っていく。

 

 

 そして今……永遠と思われた夢と悲願の果てに、
魂は星(シェファ)の中心で
自分達を収める『器』を見つけたのである。

 


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