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「始まりの神術『光』!」

「終わりの魔術『闇海』!」

 

『光』、『闇海』の連続使用!それは、自分の生命力、精神力を著しく消耗する!

 だが、そんな事は関係無い!愛する者を失う事は、死を越える苦しみだと知っているからだ!

 

「カッ!」

「キュイィィ!」

 

 光剣と闇剣の力が共に増幅する!

 血が熱い……。沸騰しているんじゃないだろうか?これ以上力を使えば、肉体が塵になってしまうんじゃないか?

 苦しい……。心身共に焼けるような痛みに襲われている。

 

「ピキキキキィィ!」

 

 尚も力は対等のままだ。1%の優劣も無い!このまま力の放出が続けば、互いに消滅する!

 その時だった!

 

「(わたしはエファロードの血を引く者。相対するサタンへ、始まりの神術『光』を!)」

 

 リルフィの心の声!?まさか!

「ピカッ!」

「ブシュッ!」

 何が起こった!?

 

「うわぁぁ!」

 

 木霊する叫び声!フィアレスの声だ!

 その直後、闇の力は弱まり光が完全に闇を打ち消した!

 闇を光が飲み込む瞬間、俺は確かに見た。リルフィが放った鋭い光線がフィアレスの右胸を貫いているのを!

 

〜死闘の果てに〜

「ゴホッ……うぅ」

 聖域の石畳の上で血を流し横たわるフィアレス。どうやらリルフィの攻撃を受けた後、転送で俺の攻撃の直撃は免れたようだが傷は決して浅くなかったようだ。

 だが、獄王としての力を全て受け継いだ者は胸を貫かれても時間の経過で回復する。俺がこの世界の完全なる平和を手に入れる為には、今此処でフィアレスの命を断たなければならない。

 俺は、先程の戦いで消耗し今にも折れそうなオリハルコンの剣を、奴の喉に突きつけた。

「サタンはこれで終わりだな」

「……君の娘にやられたよ。そんな歳で……『光』まで使うとはね」

 神と獄王……。エファロードとエファサタンがこの星に誕生して65億年……。永遠に近い程の長き歴史が、俺の一振りで幕を閉じる。

 何故かそう思うと、俺の目から止め処無く涙が溢れた。孤独な神と獄王……。互いに競い合い、戦い、認め合った唯一の存在。

 光と闇、相反する者が存在する事で自分の存在を確認出来た。自分が何を一番大切にすべきかは理解している。その為には、俺がここで剣を振るわなければならない事も。だが……どうしても、腕を動かす事が出来ないのだ!

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