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 僕の声にキュアは黙って頷く。僕達は今、二人で僕の部屋にいる。僕の決定事項を、最初に彼女に聞いて貰いたかったからだ。

「僕は……戦う事にした。ルナリートを倒し、人間界を獄界のものにする。そうすれば、僕自身が獄界に縛られる事も無くなり自由になれる。そして、魔も光の中で暮らす事が出来るだろう。始めは、ルナリートとの共存も考えた。人間界を半分に分け、魔が住めるようにすればいいんじゃないかって。その場合でも、僕は獄界の維持に力を注ぐ必要が無くなるから」

 僕は落ち着いて話を続ける。その間、キュアは瞬きすらも忘れているかのようにじっと僕の目を見つめていた。

「僕が戦う間、戦いに力を注ぐ為『深獄』の封印に使う力は極力少なくする。また、ESSの生成も中断する。ESSについては、父が残してくれた分で後数百年は大丈夫だろう。そして、魂についての関与は……僕も放棄する。その事によって何か問題が起こるようになれば、その時に対処すれば良いだろう。元々、魂についてはかつての神や獄王は関知していなかったのだから」

 僕はそう言って、軽い頭痛が走るのを覚えた。何故神と獄王は、魂界との橋渡しによる生命の誕生と死に関わるようになったのか?恐らく、稀に現れる『悪魂』を深獄に封印する為に、魂を選別する事が目的だったのだろうが……

 唯、それだけが目的ならばここまで厳密に、魂と関わっただろうか。悪魂を封じるだけならば、転生で生まれてきた後に倒して封じれば良いだろうと思う。だが、その事に関する記憶は継承されていない。……というよりは、欠けていると言った方が正確だろう。その理由は、暫く後になってから知る事となる。

「承知しました。魂界への関与は放棄、獄界の維持及び深獄の封印については最低限の力で行うという事ですね。そして……出来るだけ多くの力をルナリートとの戦いに使う」

 彼女は至極冷静にそう言った。しかし、僕を見つめる目に薄く涙が浮かんでいるのを僕は見逃さなかった。僕が再び戦いに出る事を止めたくて仕方無いのだろう。

「キュア……そんなに心配しなくていいよ、死にはしないから。必ず勝って、人間界を『魔だけの理想郷』に変えてみせる」

 そこで彼女は僕から目を逸らした。強い決意を持った僕を正視する事が出来なくなったのだ。

「はい、お待ちしています」

「エファサタン、エファロードは相容れないものなんだ。二つの存在が生まれた時から……いや、お互いを別個の存在として意識できるようになってから。僕は、自由に……幸せに生きているルナリートが憎い。憎しみと羨望で胸が張り裂けそうだ。でも、戦う事を決めた一番の要因は、僕という存在を構成する記憶、魂がそうする事を望んでいるからだ。だから、獄界の為に……そして僕という存在をこの星の真理とする為に戦うんだ」

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