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「街も見に行かないと!」

 シェルフィアはそう言って全力で城を飛び出した!

「全く……昔から変わって無いな!」

 私もその後ろを追いかけた。緊急事態なのだが、傷付いた者の為なら後先を考えずに走って行くシェルフィアの背中がとても懐かしくて頼もしかった。

 白亜の石畳の上を街の中心まで走り、辺りを見回したが……やはり皆深く眠っていた。

「そうだ……リルフィは!?」

 私達は青褪めた!最愛の娘は今学校に行っている!城も街も眠ってしまったのならば!?まさか!

「パパ、ママー!」

 その時だった!泣きながら私達の下へと走り寄るリルフィを見たのは!

「リルフィ!」

 彼女はシェルフィアの胸に飛びついた!私もすぐさま落ち着かせる為に頭を撫でた……その時!

「ポォォー!」

 聞き慣れた音!こちらへ向かう線路を走る蒸気機関車だった!運転士は……やはり眠っている!勿論乗客も!このまま機関車が暴走すれば、大惨事になる!

「ルナさん!どうするの!?」

「久々だけど、力を使うしか無いな!」

 私は、エファロード第三段階の力を解放した。髪は銀に染まり、背中には光の翼が現れる!そして、私は高速で機関車の上空に移動した!

「機関車全体に『停止』の神術を!」

 それで機関車の動きはほぼ止まった。完全に止めなかったのは、停止を解除した時に反動で再び激しく動き出すからだ。

「後は、ゆっくり動きを止めるだけだ!」

 動きが緩慢になった機関車の前に私は降り立ち、片手を前に出して動く機関車を止めた。そして、停止を解除しながら衝撃を私の腕で吸収した。かつての戦いに比べれば、このぐらい造作も無い事だ。

「パパすごーい!」

 さっきまで泣いていたリルフィが今度は私に抱き付いてきた。

「よしよし、もう大丈夫だ」

 私が彼女を抱き締めていると、シェルフィアが少し寂しそうに私を見ていた。昔は、こんな時すぐに喜んだり泣いたり走り寄ったりするのはシェルフィア、フィーネの役目だったからな。それより……機関車は止めたが、現状は一向に良くなっていない!それを何とかしなければ!そう思った時だった。

「キュィィ!」

 目の前に光の球体が現れて、徐々に消えていく……中から現れたのは、セルファスとジュディア、そしてウィッシュだった!これは、転送の力を封じ込めた聖石の力だ。

「一体これは何が起こってるの?……世界が眠ってしまったわ!」

 現れるなり、青褪めた顔をしたジュディアが叫ぶ。

「ルナ!たった今世界を転送で見回ったんだが、ミルドや他の街の人間達は皆眠ってしまったぜ!しかも、人間だけじゃない。天使だった者までだ!」

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