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 そう、自分でもびっくりするような大きな声を上げたと思う。

「……フィーネ、お前は本当に優しくて……人の気持ちや痛みがわかる子だ。お父さん、いや、俺は一人の人間としてお前が生まれてきてくれてとても嬉しいよ……神様が俺達夫婦に、こんな素晴らしい子供を授けて下さったんだからな……今まであんまり話した事は無かったけど『フィーネ』という名前は、お前が『優しくて素晴らしい娘になりますように』という意味ともう一つ……『悲しみが終わりますように』という意味が込められている。……フィーネが生まれてくれて……世界から悲しみが消えれば……俺達はそう願ったんだよ。だから……フィーネには、悲しみを味わわせる事無く……前向きに生きて欲しいと望んできた。……だから……今、お前が悲しい思いをしているのが辛いんだ。もし、俺の願いが叶うとしたら……これから先、俺がこの世界に望む事はたった一つ……フィーネが、この世界に生まれた事を憎まずに……自分を愛し……誰かを愛し……幸せになってくれる事だけだ」

 お父さんは、涙で言葉を詰まらせながら……そう言った。

「私は!」

 私が何かを伝えようとした時……お父さんは既に眠ってしまっていた。お父さんは、色んな事を抱えて辛い思いをしているんだ。私はそう思うと、それ以上声をかけられなかった。

 

 私は部屋に戻り、ベッドに入って一人考えた。自分が生まれてきた事やお父さんとお母さんの事……この世界の事……そして『愛』について……

 

「(私は、大好きなお父さんとお母さんが愛し合って生まれてきたんだ。私をこの世界に生んでくれたのは、とても素晴らしい事だと思う。……魔物や病気なんかで悲しい事や辛い事があるけれど、私は、強く生きよう。例えどんな事があったとしても……。今はお父さんが私の傍にいてくれる。お母さんも心の中にいる。……私は、自分が生まれてきた事を決して憎んだりしない。大好きな両親が私を生んでくれた。そして、大切に育ててくれたから。……この世界も……私は好き。人が愛し合って……大切な命が紡がれてゆく世界だから。魔物は……私達人間を襲ってくる憎い存在だけれど……それにも理由があると思う。だから……私は、人間も魔物も……生きている者全てが互いに争う事なく……幸せになれたらと願う。そして……お父さんも私自身も幸せになりたいと思う。今も、お父さんと一緒に生きていられる事だけでも幸せだけど、悲しみで涙を流す事が無くなれば……と思う。そしていつか……私もお母さんみたいに素晴らしい人と出会って、温かい家族を作りたいな)」

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