前ページ

 私は微笑んだ。すると、ようやくシェルフィアも機嫌を直してくれた。

「えっ?私が喜ぶような事なんですか?それじゃあ許します。明後日、楽しみにしてますね!」

 その言葉と共に、シェルフィアは嬉しそうに私に抱きついた。感情のわかりやすい子だな。

「ああ。もう黙って出かけたりしないよ。それはそうと、今日はせっかくだし街の散歩に行こうか?」

 私は彼女の頭を撫でて、少し照れながらそう言った。

「はいっ!行きましょう!」

 至福を湛えた顔……それは少し幼さを残し、純粋で大きな目が輝いている。背は私より20cm近く小さいくせに、体一杯で喜びを表現する。そんな彼女が、何よりも愛しかった。ここにいるのは、私が愛したフィーネでありシェルフィア、ずっと幸せが続きますように。そう願わずにはいられなかった。そして、私はシェルフィアの手を取り街へ連れ出した。デートするのも200年振りだな。

「ルナさん、ルナさぁん!」

 はしゃぎながら、私の手を引っ張る。街の警備は国王の命令で薄くなっており、一般人が多く街を歩いていた。

「そんなに走ると危ないぞ!明日もあるんだからな!」

 私はそう言ったが、彼女は変わらない。ずっとこんな時を待っていたんだ。私も何も考えずに楽しもう!

 私達はこの日と次の日、誰にも邪魔されずに過ごす事が出来た。世界中から集められた珍しい料理を食べ、音楽隊の演奏を聞いた。驚いた事に音楽隊は200年以上も続いていたのだ。服やアクセサリーも買った。やはりこの時代でも、私の持ち物には価値があり何でも買う事が出来たからだ。買ったものの中には、ペアのブレスレット、白紙の本などもあった。この本には、戦いが終わった時に『時の記憶』を書き記そうと思っている。全ての出来事を永遠に忘れないように……そして、私とシェルフィアの『心の証』とするために。

 勿論、兄さんとリバレスの為にも土産を買った。こうして、夢のような2日間はあっという間に過ぎていくのだった。

 

〜未来の証〜

 明日は、王が結論を出す日。明日からは忙しくなるだろう。私はこの日にすべき事を前々から決めていた。朝食を食べて、ネグリジェを着たシェルフィアが身支度を始める時間……その間に、私は自分を転送させて宝飾店に向かいすぐに戻ってきた。その時間10分以内だ。歩いて往復すれば40分はかかる。こんな事をしなければならなかった理由は、長時間シェルフィアから離れると心配される上に不信感を与えるからだ。それに、何より私はシェルフィアを驚かせたかった。今日は忘れえぬ日になるだろう。実行は夜。

次ページ