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 成る程……あれは伝説には残らなかったのか。思い出の品……フィーネ、いやシェルフィアとの幸せの証とすべきもの……私はそれを持っていたが、今シェルフィアに見られるのはまずい。だから、指揮官にそっと見せて耳打ちした。

「……宝石シェファだろう?」

 私の様子を察してか、指揮官は黙って頷いた。どうやら信じてくれたようだ。

「?ルナさん!?私に隠し事ですか!?」

 シェルフィアが髪を揺らして怒っている。そうだ、今シェルフィアにこの宝石は見せたくないんだ。

「隠し事なんかじゃないよ。だから、今は何も聞かないでくれ」

 私は真剣な顔つきでシェルフィアを見つめた。すると、シェルフィアは少し寂しそうな顔をした。

「わかりましたぁ……でも今度、ちゃんと話してくださいね!」

 その言葉の後、私達は指揮官に連れられて王の間に辿りついた。

 

「本当に、銅像の姿と同じだ……あなたが、かつてこの街を救ってくれた英雄ルナリート様?」

 リウォル国王……年は50代だろうか?白髪交じりの髪と黒く長い髭。一応はこちらも敬意を払っておくべきかもしれないな。

「はい。200年の時を経て、この街に再び現れました」

 私は軽く頭を下げた。すると、シェルフィアも頭を下げる。

「それで……ルナリート様がこの国に何用で?」

 王の目が鋭く変化する。まだ、私の事を完全には信用してはいないようだ。

「単刀直入に言わせて貰います。今から3ヶ月後、この世界……いや、人間達は皆殺しにされます」

 私は国王の目を見つめ返した。互いにその目は真剣そのものだ。だが……

「はははっ!何を言うかと思ったら……かつての英雄がそんな世迷言を!?」

 国王は愚か、兵達まで笑い出す始末……確かに現実離れした話だが……真実だ。だから、今度は少しきつい口調で言う。

「リウォル王国国王……私の言う事は真実だ。あなたは人間の王だ……そのあなたが、人間を守ろうとしないでどうするんだ?」

 私は国王を睨んだ。途端に場の空気が凍りつく……

「本気……なのか?」

 国王は少しおどおどした様子で私に聞いてきた。

「本気だ。そもそも私や、フィグリル皇帝ハルメスは人間じゃない。別の世界から来た者だ。その私達が人間の為に戦うのに、あなたは何もしないのか?事の重大さを知るんだ」

 別に脅すつもりはない。唯、人間の王にも戦いを理解してもらいたいだけだ。

「フィグリル皇帝の遣いか!?皆の者、この者を捕らえよ!」

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