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 でも、村人達と接していく内に段々心がほぐれていった。そうしていく内に、二人は自然と恋に落ちる。

 数年間、その幸せは続いた。しかし……兄さんの弱点が恋人であると知った魔は、隙をついてティファニィさんを連れ去った。そして……兄さんの目の前で殺された。そこで兄さんのエファロードとしての力が覚醒する。同時に、恋人を救う為に天使の指輪を使ってしまったのだ。その後はまた、しばしの安息が訪れた。しかし……人の命は限りあるもの。ティファニィさんは人間としての生涯を終える事になる。でも兄さんは孤独だった。だから、恋人の魂を自分の魂と同化させる事にした。

 いつでも、兄さんの中にティファニィさんはいるんだ。

 

「永遠……心は永遠だからな」

 話し終わって兄さんは優しい顔で微笑んだ。私とシェルフィアの事を喜んでくれているのだろうか?でも何だか寂しそうだ……

「はい、信じあえた心は永遠です」

 私も微笑んだ。すると、一瞬兄さんの表情が思い詰めたように曇る。

「(……俺達が幸せだったように……大切な弟の幸せは俺が守る)」

 兄さんは思っている事を言葉に出さない。一体何を考えているんだろう?

「兄さん?」

 私はそんな兄さんを見ていられずに声をかける。しかし、兄さんは一点を見つめたままだ……

「……それが……エファロードとしての……十字架だ」

 確かに兄さんはそう言った。十字架?何の事だろう?

「あ……いや何でもないぜ!ルナ、明日からの作戦はハードだが頑張ろうぜ!」

 今度は我に返ったように叫んだ。その後私達は寝室に戻ったが、私の心にはさっきの兄さんの顔が深く残っていた。

 

この時聞いた兄さんの言葉の意味は後々になって
知る事になる。

 

 


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