私は首を傾げながら問い返す。
「まぁ、行けばわかるさ。そして、リウォルは金属と石の加工が最も進んだ国……お前がすべき事もあるだろう」
兄さんはまたも微笑んだ。私にはその真意は理解出来なかったが、行くしかないだろう。
「……わかりました。その言葉を信じて行ってきます。1ヶ月……いや、1週間で戦いを終わらせますよ」
私は覚悟してそう言った。こんな事に1ヶ月も費やしていてはすぐに『計画』が始まる。3ヶ月などあっという間だ。
「さすがだな。頼りにしてるぜ!」
兄さんは力強くそう言った。私は咄嗟に強く頷く。
「皇帝、私もベストを尽くします!」
シェルフィアも間髪入れずに返事をした。
「ああ!お前達なら大丈夫だ!」
その声の後に、リバレスは寂しそうに呟く。
「あのー……わたしはどうすればいいんでしょうか?」
彼女は私と離されるのが不服なのかもしれない。
「リバレス君……君は、ルナ達が帰ってくるまでに俺の下で修行だ。これからの戦い、今のままでは危険だ」
兄さんはそう言った。意外だった。今兄さんが出来るのはそんな事だけじゃないだろう?
「……わ、わかりましたー!」
リバレスも驚きながら返答する。
「兄さんは?」
私は思わずそう聞いてしまった。賢明な兄さんの事だ、当然他にする事があるのだろうが……私達だけ敵国に侵入するのに、兄さんは何の危険も冒さないのか?という私の弱い心が顕れたからだ。
「俺はリバレス君の修行と並行して、単身で『ある調査』をする。この世界の命運を左右する事だ」
兄さんの目は真剣そのもの……そして、自分の命をも懸ける覚悟の顔……私はこれ以上聞く事は出来ないと確信した。
「……わかりました。全員の健闘を祈りましょう!」
私がそう言うと、今度は兄さんが手を差し伸べた。それに全員が手を重ねる。
「その後の作戦については、ルナとシェルフィアが帰還後にしよう!」
そう叫ぶ兄さんの姿は、まるで軍の司令官だった。皇帝という身分に慣れているんだろうな。
「今日は皆、ゆっくり休んでくれ」
その合図と共に、私達は解散した。
私とシェルフィアの寝室。そこにはリバレスもいて、夜遅くまで色んな話で盛り上がった。楽しい一時だった。
200年前に楽しく過ごしていた光景、それと寸分違わない。その後リバレスが別の部屋に移り、私とシェルフィアは愛し合った。私はシェルフィアが眠りに就くまで抱き締めて……美しい金色の髪を優しく撫で続けていた。