「その力でも、勝てない敵はたくさんいる。だから」
私がそう言いかけた瞬間……
「今の私には戦える力があります!これで、本当の意味で私はあなたから離れなくていいんですよ!私達は、ずっと一緒にいると約束したじゃないですか?だから!」
彼女は一度決めたら変わらない。それが私とソックリだった。何を言っても説得するのは難しいだろう。
「わかった。でも、私は君を最優先で守るからな」
これが譲歩出来る限界だ。シェルフィアは私の生きる意味そのものなのだから……
「はい!私も……あなたを最優先で守ります!」
彼女にとっても私の存在は同じなのだろう。少し不安だが、彼女には傷付けさせたりはしない。私は決意した。
「そろそろ、戻らないとな」
時刻は夜の8時……きっと、兄さんやリバレスは心配しているだろう。
「あっ……その前にもう一度だけ」
シェルフィアの体を覆う炎のオーラが消えて、また元の可愛い少女に戻った。
「大好き」
私達は長い長い口付けを交わした後に、名残惜しくもフィグリルへ戻ったのだった。
〜作戦会議〜
「流石だな、ルナ。よく戻った!」
フィグリル城の屋上にある会議場で、私達は集っていた。城の屋上は、空と街が360度見渡せる壮観な会議場だ。
冷たく澄んだ空気、満天の星空と街の灯火の光が私達を包んでいる。世界の広さと美しさを私は感じる。
「お帰りー!フィーネ、シェルフィア!」
兄さんとリバレスに迎えられた私達は、喜びを分かち合っていたがそれも長く続けるわけにはいかない。
「ありがとうございます!しかし、本当の意味での祝杯は、3ヶ月後を乗り越えてからにしましょう」
私は椅子から身を乗り出して、兄さんの目を真剣に見つめた。
「その通りだ。その前に一つ聞きたいが、シェルフィアの力……どうしたんだ?」
兄さんも感じ取ったらしい。通常の天使を遥かに上回る程の力だからだ。
「皇帝、私はルナさんとの約束の為に生まれ変わりました。だからきっと、私の魂が共に戦う事を望んだのでしょう」
シェルフィアは恐れも無くそう答える。彼女の決意は固い。兄さんもそれを感じ取ったようだ……
「そうかもしれないな……ただ、シェルフィアから感じる力は天使の力でも無くエファロードの力でもなく、勿論魔の力でもない」
兄さんは首を傾げる。一体何を言いたいのだろうか?