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「はぁ……はぁ……はぁ」

 早い呼吸……俺がそれに気付き振り返ると……右腕から肩にかけてを失ったフィアレスが立っていた!

「危なかったよ……今のは!君の指輪に記憶されていた『転送』の神術で、自分を消さなければ死んでた」

 よく見ると、奴の首から下がっているネックレス……そのチェーンには俺がつけていた天使の指輪があったのだ!

「早くも利用されてるわけだ……だが、もう勝負はあっただろう!」

 俺は満身創痍のフィアレスに叫ぶ。しかし……

「僕は……誇り高き獄王の皇太子!こんな所で逃げるわけにはいかない!」

 流石は獄王の息子……左手一本で剣を取り、俺の方に向けた。だが、その様子も痛々しい……

「ここを通してくれないなら……戦うしかないな」

 俺は、仕方なく再び剣を強く握り締めた。

 

「待つのだ!フィアレスよ!今回は大人しく負けを認めるのだ。お前はここで死んではならぬ!」

 

 獄王の声……子供を心配しない親はいないか……

「はい、お父さん、悔しいけど、今回は負けです。エファロード!今回は僕の負けだけど、君は今からお父さんに殺される!だから……お父さんの跡を継ぐ、僕が最強なんだ!」

 そう捨て台詞を残し、フィアレスは鍵だけ残して消えていった。

「ルナー、次が」

 リバレスが心配そうに囁く……俺だって不安だ。この次に待つのは……獄界の王……最強の力を持つ者……

 

「ルナリート・ジ・エファロードよ……我の元に来るがいい……お前は生まれてきた事すら後悔する事になるがな」

 

 俺は、フィーネとの思い出……愛……永遠の心を抱き締めて最後の螺旋階段を上がって行く……

 ついにここまで来たよ……俺は永遠の心を証明するんだ。

 この戦いが終われば……幸せに生きよう!

 

〜闇より生まれし王の末裔〜

「ドクン……ドクン」

 目の前にある。巨大な扉……漆黒の中に豪華な宝石が散りばめられた扉……それを開こうとする俺の手は震えていた。

 だが……この扉には何だか見覚えがあった。こんな所には一度も来た事がないはずなのに……おかしな感覚だ……

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