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「ルナリートとハルメスは『愛』を命題に生み出されたエファロード……『深獄』は、我々よりも危険な力を持つ魂を封じ込める場所だろう?そこに、たかが一人の人間を堕とす必要もなかろう?我からの願いで、解放してやってはくれまいか?」

 何か……いや、俺の分身がそう語る。段々、俺はその『何か』の意識を理解してきた。

「確かに……女の魂など我にはどうでもいい存在。お前の願いも理解出来るが……それでも、勝手に中界を侵略した事は到底許すことは出来ないぞ!」

 獄王が怒りながら、そう叫んだ。中界は、天界と獄界の緩衝帯だったのだ。それを天界の維持の為の犠牲にしたのは許されないか……

「それはかつての神の過ち……だから200年後の計画で水に流すのではないか?」

 200年後の計画?俺が天界から堕ちる時に神が言っていた計画の事か?

「……果たして、『愛』を背負ったエファロードがそれを実行出来るかどうか?」

 獄王が、重々しい口調で問いかける。まだ、俺?いやエファロードを信用していないようだ……

「それは……シェドロット・ジ・エファロードが最後の責務として行う。安心するがいい」

 シェドロット?誰の事だ?

「ふ……聡明なるシェドロットの最後の責務を『計画』に託すか……よかろう。だが、一つだけ条件を出す」

 獄王は、苦笑の後に俺の目を見据えた。

「困難な事ではあるまいな?」

 俺の意識が、自動的に受け答えをする。

「記憶が継承されつつあるエファロード……ルナリートの力を見せてみよ。その力が、我の影を越えるならば魂は解放する。普段は獄界の存続と深獄の封印に注ぐ為の力……たまには、戦いに使うのもよかろう」

 獄王がそう言うと、再び獄王の影が現れた。しかも、さっきの影よりも強大な力を感じる。漆黒の剣を携え、体全体が強いエネルギー膜に覆われている。そして、全てを弾き返す闇物質で出来た鎧……

「その姿……かつての戦いの時と変わらぬな。よかろう。行くぞ!」

 そう言うと、俺を支配していた意識は消えていった。いや、半分俺と同化したというのが正しいか。

 指輪を外した俺……ルナリート・ジ・エファロード……第4段階の意味……制御されない力。それは『記憶』の継承……

 連綿と受け継がれる『記憶』……エファロードの記憶……俺は理解した。エファロードの意味、自分の力を……

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