冷たい風が吹いている。日は暮れて、月と星が瞬き始めた。その光が、無人の廃墟と化したこの村を照らす……

「落ち着いたか?」

 私は、月明かりに立つフィーネに穏やかな口調で問いかけた。

「ご迷惑をおかけしました」

 フィーネは、さっき取り乱した事と勝手な行動をしたことを反省して謝った。

「全く……世話が焼けるわねー……もうちょっと考えて行動してほしーわ!」

 子供のようなリバレスにフィーネが世話を焼かれるのか?と思うと、少しおかしかった。

「わかりました。反省しています。本当にごめんなさい!」

 と、再びフィーネは深く頭を下げた。

「もういいよ。ところでだ……君は私達の正体を知ってしまっただろう?」

 私は、怒らずに優しく訊いてみた。フィーネに正体を知られても支障はないだろう。私は彼女を信用している。

「あのぉ……話が難しくて何の事かサッパリわかりませんでした。ただ、ルナさんがルナリートさんで『ダテンシ』だって事しか……『ダテンシ』という所から旅をして来たんですか?」

 と、フィーネは逆に拍子抜けな質問を浴びせてきた。

「ははっ……そうか、難しすぎたか!」

 確かにあの会話のやりとりで何も知らない人間が理解出来る筈も無い。しかし、フィーネの勘違いもおもしろかった。

「ルナがまた笑ったー!」

 と、リバレスまで笑い出した。

「フィーネ、今から説明するよ」

 と、私が説明している間、三人には笑いが絶えなかった。さっきまでの重々しい空気は何処に行ったのだろう?

 私が天界から堕ちた天使だという事。天界、獄界、人間界の三界があるという事。リバレスと私の関係など……そして何故堕天したのか……余り自分の事を語りたくない私だが、不思議とフィーネには話してしまう。しかし、人間界が、魔の脅威に晒される理由や、三界の因縁などは話せなかった。話せば、フィーネは天界……私達を憎むかもしれないと思ったからだ。

 

 一通り話を終えると……

「驚きました!あなたが天使様だなんて!」

 とフィーネは私を、恍惚とした様子で見た。

「やめろよ。私はそんなに尊敬される存在じゃない。天使達だってそうだ」

 と、羨望の眼差しを向けるフィーネを一喝した。

「でも、天使様って本当にいたんですね!神様も!それなら、この争いの世界もすぐに平和になりますよね!」

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