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「(困ったもんねー……ルナ、逃げないでいいの?)」

 と、リバレスは私を心配して逃げるよう勧めてきた。

「(まぁ、なるようになるさ。それに、街の全員に知られているのに逃げられないだろう。)」

 私は、フィーネと接するようになってから人間に対する偏見が少し和らいでいたので、祝宴には別に参加しても構わないと思っていた。

「ルナさん、今日は楽しみましょう!?参加しますよね?」

 自分達の為に祝宴が開かれることに、フィーネは驚きながらも嬉しそうだった。こんなに嬉しそうなのに、参加しない訳にはいかないだろう。

「そうだな、せっかくだし旅の疲れもあるから、今日はゆっくりと祝ってもらおう」

 私が、「仕方ないな」という表情と共にそう言うと、

「本当ですか!もしかしたらルナさんはこういうのは嫌いかと思ってました。ありがとうございます!」

 フィーネは、自分の母と同じ苦しみからこの街が救われたことが嬉しいのか、私も祝宴に参加することが嬉しいのか、何にせよこんなに嬉しそうなフィーネは初めて見たかもしれない。こうして私達は、即席の祝宴会場の中心へと案内されていった。会場は街の中心にある噴水前。雨は止み、空には月が出てきた。

 どんどんと、テーブルと椅子が運び込まれる。その上にはテーブルクロス、そしてありとあらゆる酒や豪勢な料理が運びこまれてきた。

 街の人間のほとんどが参加するのだろうか?この中心地だけでも数百席以上はある。さらに、街の道にも家から出したテーブルが並べられて各家庭でも宴会の準備をしているようだった。正に、この街全体が祝いのムードに包まれていくのだった。

 

〜喜びの祝宴〜

 街は見渡す限り、狂喜に満ちた人々で溢れていた。どうやら、宴会の準備が出来たようだ。私と、フィーネにこの街最高の酒である『恵みの雨』が純銀の杯になみなみと注がれた。街の人々もまた、その手には酒を入れた杯を持っていた。一瞬静寂が訪れた。一体何をする気だ?

「さぁ、大英雄のルナ氏とフィーネ嬢に感謝の意を表し……乾杯!」

 街長の叫びと共に人々が杯を『キンッ』という音と共にぶつけあって、酒を飲み始めた。恐らくこれは何らかの儀式かしきたりなんだろう。

「かんぱーい!」

 フィーネが私と杯をぶつけあった。その後、街長やその他数え切れない人間が私達と杯をぶつけあった。

 人間はおかしな儀式をするものだ。そのまま、各々が飲めばいいものを……

「さぁ、皆の者!この偉大なる勇者の話を酒の肴にしよう!」

 またも街長が勝手に叫び、多くの人間が集まってきた。でも私は、人間達にうまく嘘をついて話が出来るほど器用じゃない。

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