前ページ

 私が用意を終えて、二人は未だ用意に追われていたので私は天界から持参した本を開いた。本のタイトルは『自由と存在』だ。この本は、私にとって思い入れが深い……なぜなら、今から1000年前に天界で私のような考えを持ち厳罰を受けた天使が書き残した本だからだ。その天使と私は仲が良く、兄のように慕っていた。しかし、神官によって力のほぼ全てを封じられて存在を消されたのだ。

 その天使が消えても、思想は私に根付いた。この本は、言わば私にとっての生きる指針と言っても過言ではない。無論、本の内容は一言一句記憶しているのだが、大切な物なので持ってきたのだ。

 しばらく、本を熟読していると二人の用意が終わったようだった。

「用意は済んだか?」

 と、私は二人に訊いた。

「オッケーでーす!」

 とリバレスは元気に答えた。その表情は相変わらず元気そうだ。それにしても、リバレスの見た目は何も変わっていないのに、なぜ私よりも用意に時間がかかる?

「はい!私も大丈夫です!」

 と答えたフィーネを見た私は驚いた。何故なら、姿に似合わぬ重そうな鎧を着た上に剣を三本も携えている。

「……フィーネ、動けるのか?」

 と私は呆れながら訊いてみた。

「……もちろんですよ!」

 と声を張り上げて一歩歩こうとした瞬間、ガシャン!という大きな音を立ててその場に崩れ落ちた……

「フィーネ、意気込みはわかったから、鎧と剣は置いてくるんだ。動けなければ意味がないだろう」

「……はぁい……そうします」

 私が言い聞かせると、彼女は顔を赤らめて恥ずかしそうに部屋の奥へと戻っていった。

 数分後……

「お待たせしました!」

 今度はフィーネは、丈夫そうな衣服を着て、剣とナイフを一本ずつ装備して現れた。そして、調理器具やテントなども持っている。これなら大丈夫だろう。

「……よし、出発するぞ。人間を助けたいんだろ?」

 と、私は声をかけると同時にテントを担いだ。人間の女性が持って旅するのには少し重いだろう。

「はい!ありがとうございます!……でも、その前にどうしても立ち寄りたい所があるんです」

 と、一瞬彼女は悲しそうに目を伏せたのでその場所に立ち寄ることにした。

 


目次

続き