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「(何かしらねー?)」

 指輪に変化したリバレスにも、その光景は見えているようだ。

「(さあな。私に人間の行動がわかる筈がないだろう。ん?)」

 私はその意志をリバレスに転送した直後、あるものを見つけたので立ち並ぶ建物の間に隠れた!

 

「パパ……パパー!行かないでよー!
今度遊んでくれるって言ったじゃないかー!」

「あぁ……あなた!私と子供を置いていかないで!」

「うぅ……お父さん、お父さぁぁん!」

 

 葬列だった。喪服らしきものを身に着けた人間達が100人ばかり……しかも、女、子供ばかりが棺に納められた無残な亡骸を運んでいるのだ。間違いなく、昨日鉱山で皆殺し……惨殺された人間の親族だ……その遺族達のある者は大声で泣き叫び……またある者は糸の切れた操り人形のような放心状態に……またある者は錯乱状態に陥っている。私が隠れたのは、その中にフィーネの姿があったからだ。彼女とは会いたくなかったから隠れたのだが、彼女もまた深い悲しみに包まれ周りが何も見えていない様子だった。遺族達に、フィーネのような女子供達しかいないのは、恐らく今までにも同じように『男』が『魔』に殺され続けてきたせいだろう。昨日鉱山で見たように、人間は『魔』によって耐え難い苦しみを与えられている。

 

 そして……その悲しみの行進は、ゆっくり……ゆっくりと私の前を通りすぎていったのだった。

 

「(人間にも同じように……悲しみの心があるようだな)」

 私は人間に多少の哀れみを感じたと同時に、天使と同じ……いや、他人を想う心はそれ以上であるかもしれないということに驚いた。

「(所詮、紛い物でしょー?)」

 リバレスは、相変わらず全く人間を認めていない。怪訝そうな顔が私の脳裏に浮かんだ。

「(本当に、あれが紛い物なのだろうか?フィーネ達人間のあの悲痛な顔が?)」

「(もー!しっかりしてよールナ!こんな場所は早く離れましょーよ!)」

 怒るリバレスに促され、私は食料店へと向かっていった。だが、私にはどうしてもあの悲しみは偽りに思えなかった。

 

〜人間への疑問〜

 私達は、葬列からだいぶ離れた所にある食品店に着いた。店は、立ち並ぶ民家と同じようなレンガ造りだが入り口の上に大きく『ミルド食品店』と書かれてある。私は、小奇麗にされた店の階段を上り扉を開けた。途端にカランカランと音がする。

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