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「ノレッジ、他の天使を見下すような言い方は止せ。そんなに、自慢したいのなら私に勝ってからにしろ。約束できるか?」

「いいでしょう。但し、僕が君に勝った暁にはどうなるか知りませんよ!」

「あぁ、構わない。それと、友達なんだから後で二人にはちゃんと謝っておけよ」

「そうですね。ちょっとやり過ぎでしたか」

 ノレッジは普段は大人しく理知的な天使だが、テスト発表の時だけは癖が悪い。そう遣り取りが続いていく間に、いつのまにか始業時間が近付いていたので、私達は慌しく教室に入り席についた。

 

〜学校〜

 学校は午前9時から夜の8時まである。

 一日の時間割の教科数は、途中昼休憩を挟んで1時間ずつで10教科ある。毎日毎日それの繰り返しだ。

 私が天使学校に入学してからの800年以上、同じことが続いている。

 教科はどれも共通して、『神』への忠誠心を養う為の教科だ。天界の歴史はもちろんの事で、生活の仕方それに考え方までが教えられ強制される。全ての天使に対して、生きる術や思想に至るまで画一さを求めているのだ。

 私は、一人の天使として否、生まれ落ちた一つの生命としての自由を奪う学問が嫌で嫌でたまらなかった。

 そんな私が優秀な成績を修めているのは、いずれ天界の指導者となり、この窮屈な教えを撤廃させたいからに他ならない。

 私は、生まれつき全ての書物や見聞きした物を覚えようと意識すれば絶対に忘れない。1000年前に一度読んだ本も一語一句覚えている。それは、他の天使から見れば異常らしいが私にとってはそれが普通なのだ。

 本当は……学校に行きたくない。こんな意味の無い言葉の羅列を教えるだけの場所にいても苦しいだけだ!

 それでも、学校に来ないとすぐさま神官ハーツがやってきて裁判にかけられ、断固拒否すると死刑になる。今迄、私と同じような考えを持った生徒は皆処刑されたのだ!

 自由を拒絶される世界。そして、教えに反することは何一つ許されない世界……それが私達の、総勢1500の天使が住む天界だ。

 

『神学』、『歴史学』、『生活学』、『神術学』、『聖歌学』、『言語学』、『法学』、『統治学』、『兵法学』、『戦闘実技』の10教科を終え、ようやく夜8時の授業の終わりと共に、今日も意味の無い一日だったと痛感していた。

 


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